品質とは何か?
代表取締役 髙橋 仁弊社のスタッフは毎日イントラ上で業務日報を書くことになっています。その中には「今日の感想」という項目があり、それぞれ思っていることを書いていいことになっています。その中からあるスタッフの発言を一つ紹介します。
1日の感想(スタッフの業務日報から抜粋)
“顧客満足を実現する”とか“品質”ということに対する認識がたまに自分の中でぶれることがある。 自分は技術者なので、技術的な面での品質も当然保障するべきものと思っているが、そんなモノ本当に必要とされているのか?
例えば、建築物に例えて言うなら
・外装は適当でいいので、堅牢な建物を建てたい人
・外装は適当でいいし、建物の強度自体もあまり欲しない人
・建物の強度はいい加減でいいので、その分を外装に当てたい人
・・・
お客が言う通りのものを作ればいい? 「そんなんじゃダメですよ」とお客にアドバイスする?
難しい・・・。
真剣に考えているという意味で嬉しく感じます。いい機会ですので、今日は「品質と顧客満足の関係性」について触れたいと思います。ただし、「品質」はとても広範に使われる言葉ですので、ここではWebソリューションという範疇に制限した「品質」の定義だとご理解いただきたく存じます。
「品質」の定義と分類
私達の場合、「品質とは、顧客要求を満たし満足させる程度」と解釈しています。プロセスマネジメント郡全体を捉え、実践を通じて学んだ結果、この定義にたどり着きました。このことについて、私達が学んだことを織り交ぜながら、より突っ込んだ解説を試みます。
まず第一のステップとして、品質をプロジェクトマネジメントで定義されている2種類に分類してみます。
- 成果物の品質
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成果物の品質とは、顧客の手元に納品される成果物が、顧客要求事項に定義されている目的を満たした状態であることを意味します。
- プロセス(マネジメント)品質
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プロセス(マネジメント)品質とは、IN(顧客要求事項の確認)→OUT(成果物の納品)される間のプロセスの質を意味します。例えば、スケジュール管理、コスト管理、変更管理、人的管理等の品質が含まれます。
顧客要求を考える
続いて、もうひとつのキーワードである「顧客要求」を分解します。
シックスシグマ的に「顧客要求」を捉えれば、2つの要素があります。
- アウトプット要求
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アウトプット要求とは、顧客の視点で捉えると、最終製品/商品あるいはサービスに期待する特色や特性を意味します。
- サービス要求
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サービス要求とは、顧客の視点で捉えると、最終製品/商品あるいはサービスを受け取るまでの間に、どのような扱いを受け、どのように対応されることを期待しているかということを意味します。
例)例えば、東京からシアトル経由でニューヨークに飛行機で出国したと仮定します。顧客のアウトプット要求は、ニューヨークに無事に到着することで満たされます。また、その日は非常に混雑しており、カウンターで1時間も待たされたり、シアトル経由所で、10時間も待たされたりすると、サービス要求は満たされていないということになります。一方航空会社は、顧客のアウトプット要求を満たすために飛行機の整備プロセスを整えたり、サービス要求を満たすためにカウンター業務プロセスを見直すことになります。
ここで一度整理しましょう。今までの解説をまとめると、顧客要求である、「アウトプット要求、サービス要求」を満たすために、企業は、品質項目である「プロセス品質、成果物の品質」を維持管理し、結果的に、顧客満足を図ろうとしています。
顧客要求分析モデル
「顧客要求」について、もう少し突っ込んだ解説を試みます。今度は視点を変えて「要求分析モデル」を使用します。要求分析モデルとは、世界的に知られる狩野紀昭氏の研究に基づくもので、私達もシックスシグマの導入時には随分勉強した経緯があります。世界でも革新的な企業に浸透し始めており大変優れたモデルです。簡単に言いますと、顧客の「要求」には3種類ある、というものです。
- 基本要求
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顧客が、これだけは絶対に満たしてほしいと考える要因、特性、パフォーマンス基準のことを言います。
- 変動要求
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これらの要求を満たすことができれば、顧客の評価は上がり、満たすことができなければ評価が落ちるという要因、特性、パフォーマンス基準のことを言います。
- 潜在要求
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顧客の期待を上回る要因、特性、パフォーマンス基準のことを言います。
顧客要求である、アウトプット要求、およびサービス要求を正確に捉えようとする場合、顧客の求める要求をそのまま受け取るのではなく、それぞれの要求内容を上記3項目にセグメントしていくと、顧客の言っていることと、言わんとしていることの違いが見えてくるのではないでしょうか。
顧客満足のセグメンテーション
最後に、「顧客満足」を分解してみます。嶋口充輝氏がある著書で満足には3つの分類があると言っています。それは、
- Dissatisfaction
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マイナス満足=不満
- Un-satisfaction
-
満足ではないが、不満もない
- Satisfaction
-
満足
というものです。このセグメンテーションに私は感銘受けた記憶があります。ところで、狩野氏と嶋口氏の捉え方には関連性があることがお分かりいただけると思います。表にすると下記のようになります。
まとめ
スタッフの悩みにありましたように、「顧客満足」と「品質」は確かにぶれやすい関係にあります。しかし、このように全体像を捉えると「顧客要求」「品質」「顧客満足」は視点が違うだけで非常に高い関連性があることがわかります。また、全体の業務の流れのように理解すると理解しやすいように思えます。日本的に言えば、「因・縁・果」の流れのようであり、西洋的にいえば、Y=F(X)のようなものだと考えます。この流れを図式化すると下図のようになります 。
つまり、上流工程である顧客要求をアウトプット要求(基本・変動・潜在)とサービス要求(基本・変動・潜在)の計6つのセグメンテーションに失敗すると、その後の工程でいかに努力しようとも顧客満足に達しないことは間違いないようです。田口メソッドは「設計段階できちんと設計しなければ、トラブルはなくならない」と強く主張していまが、本当にその通りだと思えます。
最後に
「品質とは何か?」というテーマをプロセスマネジメント全体像の中からキーワードを使い解説してみました。最後に申し上げたいことは、このようにすれば品質の高く、顧客満足度の高い成果物が可能だとしても、企業間、担当者間の信頼関係が無い限り真のソリューションは不可能だと信じています。信頼関係があってこそ真のコミュニケーションが達成されます。また、顧客企業様の「事実」を捉えることが何よりも大切な第一歩だと信じています。
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