Webサイト構築の工程管理
プランニング&ディレクショングループ ディレクター 田口 公章(ITコーディネータ資格保有者)
プロジェクトの成果を左右するのは「ひと」
私たちが手がける仕事には、既存コンテンツの更新を毎日行うようなものから、新規構築またはリニューアルといった数ヵ月にわたるプロジェクトまで、さまざまなものがあります。その中でも特に、期間が長く規模の大きいプロジェクトになると、やるべきことやステークホルダー(利害関係者)も多くなりますから、限られた期間内にプロジェクトを完了させ、目標とする効果を得るまでの道のりは長く困難なものになります。
なぜ大きなプロジェクトの進行が困難なのか。その原因のひとつには、「プロジェクトに関わる人数が多くなるから」ということが挙げられるでしょう。なぜ人数が増えるとプロジェクト進行が困難になるのか。それは、プロジェクトのステークホルダーは信頼できる協力者である一方で、裏を返せばいつでも足を引っ張ることのできる人たちでもあるからです。ですから、プロジェクト進行にあたっては、いかにして「ステークホルダー全員が同じ目標を共有しながらそれぞれの役割を果たすことができきるか」ということが肝要になります。
「とりあえず」動き出さない
プロジェクトマネジメント手法には、これといった「唯一の正解」は存在しないように思います。具体的な施策には、プロジェクトごと、あるいはプロジェクトマネジャーごとに千差万別の個性が存在するでしょう。しかしPMBOKなどが参考になりますが、守るべき手順や最低限押さえるべきポイントはいくつか存在します。少し乱暴にひとことでまとめると、ポイントは「事前準備に全力を尽くし、今やるべきことを後回しにしない」ということになるでしょうか。次に、そのためのポイントをいくつか紹介します。
- プロジェクト定義、プロジェクト計画
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ここでは、プロジェクトのスコープ定義(対象範囲の定義)を行います。当該プロジェクトでは何をもって成功とするのか、何をやって何をやらないのか。これを決めないことには、計画のしようがありませんし、モニタリングや評価のしようがありません。
- リスク洗い出しと管理計画
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リスク管理においては、リスク発生の可能性を最小にすることと、リスクが発生した場合の影響を最小にすることが肝要です。「まだ起こりもしていない問題を心配してどうする」こんな考え方は論外です。もしリスクが発生したとき、事前に想定していた場合と何の用意もしていない場合、どちらがより現場に混乱をもたらし、より多くのコストを必要とするかは明白です。
- プロジェクト体制定義
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各ステークホルダーのポジション、権限、責任を明確に定義します。不測の事態に備え、各ポジションには、必ず正副2系統を用意するのがよいでしょう。クリティカルな事項の決裁を依頼したいのに多忙な上司が捕まらない、こういったことはよくあることですが、代理を立てることで解決する場合も多いでしょう。
コミュニケーションルートは、プロジェクトマネジャー型(PM型)に固定しておくとよいでしょう。各ステークホルダーが各個にコミュニケーションをとってしまうと情報が錯綜し、混乱を招きます。すべての情報をプロジェクトマネジャーに集約することで、スムーズな情報伝達が可能になります。
また、体制の定義と同時に、使う言葉の定義を共有しておくことも重要です。たとえばWebサイトのビジュアルデザインの案を提出して「確認して欲しい」と依頼する場合でも、「確認する」という言葉を「全体的な色味やトーンを見ればよい」と捉える人もいれば「デザインモチーフやナビゲーションボタンの文言など、隅々までチェックするべきだ」と捉える人がいるかもしれません。このような根本的な部分での認識の不一致は、往々にしてプロジェクト進行の妨げとなってしまうものです。
正しいスケジューリングのススメ
プロジェクト進行において悩ましいのがスケジューリングです。スケジューリングの際には、達成可能なスケジュールを作成することが肝要です。よくある過ちが「まず締め切りありきで、そこから逆算すること」です。締め切りから逆算しただけのスケジュールは、一見何とかなりそうに見えますが、実際には実行不可能なものになる場合が多いでしょう。スケジューリングの際には、必ず次の手順を守る必要があります。
- タスクの洗い出し(必要な作業をモレなく、ダブりなく抽出する)
- 各タスクに必要な期間を設定
- 各タスクに必要な期間を積み上げたものと希望納期までのギャップがあれば、それを埋める
- 事前準備を行う(前行程の品質を上げる)
- 人を増やす
- 各タスクをオーバーラップさせる(ただしリスクが増える)
- それでもだめな場合は、クライアントへ納期遅延の申し入れを行う(最終手段)
また、各タスクに必要な期間を設定する際には、あらかじめ余裕(バッファ)を見込んでおく必要があります。ただしこのバッファは、各工程のはじめに使ってしまうのではなく、必ず工程の一番後に、次の仕事のために使うことが重要です。各ステークホルダーは、やるべき仕事を「今すぐやる」「できるまでやる」というようにし、けっして後回しにしてはいけません。
またスケジュールと進捗を、目に見える形で共有することも重要です。プロジェクトメンバー全員に見えるところに大きなホワイトボードを置き、全体のスケジュールと進捗状況を書き込むというのもひとつの手でしょう。必要に応じて定例ミーティングを開催するなどし、リアルタイムで進捗状況をモニタリングする必要があります。計画しっぱなしではなく、変化する状況を捉え、すぐに具体的アクションを起こすような仕組みを実行できれば、プロジェクトを成功へ導くことができるでしょう。
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