Webビジネスにおける組織体制構築と業務改革
取締役副社長 兼 経営企画室長 熊谷 真二Webビジネスの展開にあたっては、有効な事業戦略の策定が必須の条件です。一方で、Webビジネス成功のためには、策定された事業戦略を前提とした事業運営のための効率的な組織体制の構築が生命線となります。
Webビジネス成功のための組織体制を考える
Harvard Business SchoolのClayton M. Christensen教授(以下Christensen教授)は、ベストセラー「The Innovator's Dilemma : When New Technologies Cause Great Firms to Fail(日本語訳:イノベーションのジレンマ−技術革新が巨大企業を滅ぼすとき)」の続編「The Innovator's Solution: Creating and Sustaining Successful Growth(日本語訳:イノベーションへの解 収益ある成長に向けて)」において、イノベーションを梃(てこ)とした“新成長事業”運営のための組織体制を検討する有益なフレームワーク(図1参照)を提案しています。Webビジネスは、多くの企業にとって“新成長事業”として位置づけられます。ここでは、WebビジネスにChristensen教授が示すフレームワークを当てはめ、Webビジネス成功のための組織体制のあり方を考えてみます。
イノベーションのタイプ
まず、自社のWebビジネスが、どのようなタイプのイノベーションをベースとしたものかを見極めます。これは、「The Innovator's Solution」で提示されている以下の3タイプからの選択になります。
- 1. Sustaining Innovations(持続的イノベーション)
パフォーマンスの向上に対価を支払う意思のある、主流市場の最も魅力的な(例えば収益性の高い)顧客をターゲットとする。- 2. Disruptive Innovations(破壊的イノベーション)
- (1) Low-End Disruptions(ローエンド型破壊)
主流市場のローエンドをターゲットとする。- (2) New-Market Disruptions(新市場型破壊)
無消費をターゲットとする。
組織体制検討のフレームワーク
次に、Christensen教授が示す以下のフレームワーク(図1参照)を活用して組織体制のあり方を検討します。
イノベーションのタイプに応じて、図1の各領域の特性をもった組織構造がフィットします。
- Sustaining Innovations(持続的イノベーション)によるWebビジネスの場合→領域Aまたは、領域B
- Low-End Disruptions(ローエンド型破壊)によるWebビジネスの場合→領域D
- New-Market Disruptions(新市場型破壊)によるWebビジネスの場合→領域C
ここでは、自社のWebビジネスの組織を上記のフレームワークで評価したときに、イノベーションのタイプに応じた適切な組織体制の選択(上記における4つの領域からの選択)がおこなわれているかどうかが問題となります。仮に組織体制選択の考え方に誤りがある場合は、大胆な体制変更が求められます。
Webサイト運営業務の業務改革の必要性
Webビジネスの展開にあたって不可欠となるWebサイト運営業務は、一般的に(Webビジネスのタイプによらず)以下のような問題点をもつ傾向があります。
- 業務運営がサービスやテーマによる運営単位別の部分最適になりやすく、全体最適の視点からの業務効率化が図れない。
- サイト制作、運用のオペレーションに追われ、サービスのプランニングが後追いになりやすい。
- その結果、運営コストが肥大化しやすい。一方でプランニングのレベルアップが進みにくい。
上記のような問題点を回避しつつ、ビジネスの目標を達成していくためには、上記のフレームワークを活用して組織体制の大きな枠組みを決定した上で、Webサイト運営業務全体の見直し(業務改革)を継続的に行っていくことが不可欠となります。
業務改革のポイント
Webサイト運営業務の業務改革推進にあたっては、機能領域別に改革への取り組みの考え方が異なることに留意することが重要です。
Webサイト運営業務は、通常、「プランニング」、「マネジメント」、「オペレーション」の3つの機能領域より構成されています(図2参照)。機能領域に応じた改革の考え方は以下のようになります。「オペレーション」については、“簡素化”、“アウトソーシング”により、徹底的なスリム化を図ります。「マネジメント」業務については、個々の業務を評価した上で過剰な管理を排除し、“マネジメントの重点化”をおこなうとともに、必要に応じて“マネジメントの強化”を図ります。「プランニング」業務については、上記によって創出した余力を投入し、“プランニング機能の質・量の充実”を実現します。このような機能別の改革の組み合わせにより、人的資源の再配置をおこなっていきます。業務改革においては、業務の詳細な分析を通じた“業務の可視化”や業務プロセスの再設計が必須ですが、大胆な目標設定に基づく改革の成果を実現していくためには、上記のような考え方による人的資源の再配置の大きな視点をもつことが必要となります。
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参考図書
- Clayton M. Christensen, The Innovator's Dilemma : When New Technologies Cause Great Firms to Fail(玉田俊平太監修、伊豆原弓訳 『イノベーションのジレンマ−技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社)
- Clayton M. Christensen, Michael E. Raynor, The Innovator's Solution: Creating and Sustaining Successful Growth (玉田俊平太監修、櫻井裕子訳『イノベーションへの解 収益ある成長に向けて』翔泳社)
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