JIS X 8341-3:2010を理解するために
アクセシビリティ・エンジニア 中村 精親JIS X 8341-3:2010が公示されました。以前からアクセシビリティBlogや筆者のコラム等でも触れてまいりましたが、この日本工業規格は、2004年に公示されたWebコンテンツのアクセシビリティに関する設計指針、JIS X 8341-3の改正版です。
本コラムでは、この改正版について押さえておきたい点について、簡単にご紹介したいと思います。
WCAG 2.0との関係
2008年12月に勧告として公開された Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.0 は、 W3C / WAI により策定された国際標準となるWebアクセシビリティガイドラインです。改正版JISでは、「箇条7 ウェブコンテンツに関する要件」においてWCAG 2.0と同一の達成基準を採用していることが最大の特徴のひとつといえます。
このことにより、改正版JISの達成基準を満たすことで、同時にWCAG 2.0の達成基準を満たすこと(もしくはその逆も同様)になり、特に国際的な企業などにおいては、今までのようにJISとWCAGのどちらに対応するか、という部分で悩む必要がなくなりました。
WCAG 2.0については、公開時にその特徴についてまとめたコラムを書いていますので、そちらもご参照いただければと思います。
「ウェブアクセシビリティの確保・向上に関する要件」
一方、JIS X 8341-3とWCAG 2.0における違いについても理解しておくべき点がいくつかあります。まず、ひとつめは改正版となる前から関連する内容が記述されていた「箇条6 ウェブアクセシビリティの確保・向上に関する要件」についてです。
この項目はJIS X 8341-3:2004の際にも、WCAGとの違いとして取り上げられていたものですが、JIS X 8341-3に適合するためには前述の箇条7の基準を満たすだけではなく、企画、設計から検証、保守・運用まで、定められた要件を満たしている必要があります。
例をひとつ挙げておきますと、「フィードバックによる意見の収集」という項目では利用者からの意見を収集する手段を用意することが定められていますので、お問い合わせフォームやメールアドレスなどを提供する必要があります。
試験
もうひとつ、大きなポイントとして挙げられるのが、「箇条8 試験方法」です。「試験」というのは、実際に達成基準を満たしているかどうかの試験を指しています。
この項目は改正版JISで新しく追加された内容のひとつで、改正前には曖昧だった部分が、規格に定められた方法により試験をおこない、その結果を表示することが求められることにより、客観的な評価が可能になっています。
以上のように、改正版となるJIS X 8341-3:2010には、WCAG 2.0から継承された点に加え、基準に対しての検証をさらに実践的にすべく追加された点があります。こうした内容の詳細につきましては本コラムではお伝えしきれません。
そこで、今後改正版JISに関連する情報がまとめられていく場所を最後にご紹介したいと思います。本日より新たに公開された「ウェブアクセシビリティ基盤委員会」のWebサイトがその場所です。このウェブアクセシビリティ基盤委員会とは、情報通信アクセス協議会の一委員会として、JIS改正原案を策定した情報技術標準化研究センター(INSTAC)のワーキンググループでおこなわれていた活動を引き継ぐ組織であり、当社もメンバーとして参加しております。
本委員会の詳細につきましては、委員会のWebサイトをご参照ください。
WCAG 2.0に続いて、ついにJIS X 8341-3の改正版も正式なものとなりました。ガイドラインが明確なものとなったことで、今後はWeb制作におけるアクセシビリティ向上がより一層求められていくことになります。当社としましても、ひとつでも多くのアクセシブルなWebサイトを制作していくとともに、ガイドラインの普及についても協力していきたいと思っております。
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