アクセシビリティPodcastが目指してきたもの
アクセシビリティ・エンジニア 辻 勝利5月23日のコンテンツを持ちまして、2007年9月からお届けしてきた「辻ちゃん・ウエちゃんのアクセシビリティPodcast」が最終回を迎えました。3年以上の長期間、たくさんの方々にお聞きいただきまして、本当にありがとうございました。今回はこのコラムで、アクセシビリティPodcastを通じて私たちが目指してきたものについて振り返ってみたいと思います。すでに更新を終了したコンテンツではありますが、この記事とともに、過去の音源をご参照いただけましたら幸いです。
音声コンテンツへの思い
筆者がアクセシビリティPodcastについて検討を始めたのは2007年の夏でした。当時、なんとかして「アクセシビリティは難しい」、「アクセシビリティは特別な対応」といったようなアクセシビリティに関するネガティブなイメージを払拭し、もっと身近にアクセシビリティを感じてほしいと考えていたとき、昔購入したソフトウェアの音声解説のことを思い出しました。
一見、Podcastとは何の関係もなさそうなカセットテープの音声解説ですが、提供されていた音声によるソフトウェアの解説が、文字の説明書を読むよりもはるかにわかりやすく、ほどなくソフトウェアの操作方法を習得することができたことをヒントに、文字で読んだだけでは難しく感じるアクセシビリティ関連情報を音声で提供することを提案しました。そして、通勤の合間などに聴いていただくことで少しでも多くの方がアクセシビリティを身近に感じられたらという思いで開始したのが、このアクセシビリティPodcastでした。
コンテンツは、以前から交流のあったWebアクセシビリティの第一人者である株式会社インフォアクシアの植木真氏に協力を依頼し、植木氏(ウエちゃん)と私(辻ちゃん)のフリートーク形式で作成し、毎回10分程度にまとめて配信を始めました。
コンテンツを10分程度にまとめようと考えたきっかけは、都内で通勤する方々が電車に乗っている時間が少なくとも10分くらいあるのではないかと考えられたからです。長すぎると1コンテンツを聞き終える前に目的地に到着してしまいますし、短すぎると内容的に物足りなくなってしまう可能性があると考えて、10分を目安とすることにしました。第1回目から収録したコンテンツが長くなってしまい、前編と後編に分けて公開したのはそのような背景からでした。
アクセシビリティPodcastのコンテンツ
当初、3か月を1シーズンとして試験的にコンテンツの発信を始めたことから、アクセシビリティPodcastでは新しいシーズンが始まるごとにコーナー企画を考えていました。
例えば第1シーズンでは、アクセシビリティヘッドラインとしてWebアクセシビリティに関する最新情報をお伝えしたり、視覚障害者がWeb閲覧に使用する音声ブラウザやスクリーン・リーダーの紹介を行ったりしました。また、Listener's Voiceというコーナーには、Web制作の現場でリスナーの方々が直面された多数の質問が寄せられ、このコーナーはコンテンツ終了直前までアクセシビリティPodcastの名物コーナーとなりました。
アクセシビリティPodcastを支えてきた技術
アクセシビリティPodcastのコンテンツはミツエーリンクスのスタジオで収録し、いったん当社のサウンドユニットのスタッフが編集を行い、関係者で確認して再度編集を依頼し、広報確認を行ってから公開するという流れで作成してきました。
もうひとつ、このコンテンツを支えてきたのが、音声とともに提供されるテキスト(トランスクリプション)でした。音声を聞くことのできない環境からこのコンテンツにアクセスしてくださっている方に音声コンテンツと同じ情報を提供することはもちろんですが、コンテンツ内で紹介したリソースへのリンクを紹介したり、分かりにくい用語をテキストで提供することで、よりアクセシブルなPodcastを目指してきました。もちろん、コンテンツの途中から登場した、音声と字幕を同時に提供できるアクセシブルなFlashプレーヤーも、このアクセシビリティPodcastを支えてきた重要な技術の一つです。このように、アクセシビリティPodcastは多くの人たちや技術によって支えられてきたコンテンツでした。
アクセシビリティPodcastが目指してきたもの
繰り返しになりますが、アクセシビリティPodcastは、Webアクセシビリティをもっと身近に感じていただくことを目的として開始したコンテンツでした。お寄せいただいた感想の中に、分かりやすい解説や読み上げ音声を交えたデモンストレーションを通して、Webアクセシビリティをより身近に感じることができるようになったというコメントがあり、約3年の間、このコンテンツを継続してきてよかったなと感じました。
また、シーズン4でお届けしたミッションアクセシブル等を通して、さまざまなゲストの方にもコンテンツにご参加いただき、Webアクセシビリティを高めるために、Webに関わるすべての人たちが協力し合う、Accessibility Hubの実現に向けて大きく前進することができたと考えています。
アクセシビリティPodcastの更新は終了してしまいましたが、今後もアクセシビリティBlog等を通じてアクセシビリティを身近に感じていただけるようなコンテンツの提供を続けて行きたいと思っております。
引き続き当社のアクセシビリティ関連サービスに、どうぞご期待ください。
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