モバイル フレンドリーを超えて
取締役 木達 一仁Googleは4月21日よりモバイル フレンドリー、つまりWebページがスマートフォンなどのデバイスに対応しているかどうかをランキング要素として使い始めます。以降、モバイル フレンドリーでないWebページは、モバイル検索において相対的に不利になることが見込まれます。これは、今年2月27日付でGoogle ウェブマスター向け公式ブログに掲載された記事『検索結果をもっとモバイル フレンドリーに』で明言されていたことで、ご存知のWeb担当者の方も少なくないでしょう。
このGoogleの動きを踏まえ、Webサイトのモバイル対応、モバイル フレンドリー化を煽るような動きが、一部にはあるようです。先のブログ記事のなかで、検索結果に大きな変化をもたらすとGoogle自身が述べている以上、確かに注目に値する動向ではあります。しかし、スマートフォンが本格的に普及し始めて数年が経ったいま、アクセスログ解析を通じてモバイルユーザーの割合や動向に注意を払い、既にモバイル対応に取り組んできた方であれば、焦ったり慌てるような必要はおそらく無いでしょう。
もっとも、モバイル対応したつもりのWebサイトが、Googleによって確かにモバイル フレンドリーと判定されていることを確認する意義はあると思います。モバイル フレンドリーかどうかは、サイト単位ではなく、ページ単位で判定されます。特定のWebページのURLを、モバイル フレンドリー テストのページで入力することにより、判定結果はもちろん、モバイル フレンドリーでなかった場合、どうすればモバイル フレンドリーにできるかのアドバイスを得ることができます。仮にページがモバイルフレンドリーでない場合、たとえば以下のような理由が提示されます。
- テキストが小さすぎて読めません
- リンク同士が近すぎます
- モバイル用viewportが設定されていません
- 互換性のないプラグインを使用しています
逆に、これらの条件に違反しなければモバイル フレンドリーと判定されるわけですが、もう一歩踏み込んだ詳しい対策については、そのページを作成した方法(CMSを使用した / 第三者に作成してもらった / 自分で作成した)に応じてアドバイスが提供されます。
サイト内の全ページを網羅的にチェックしないまでも、モバイルユーザーからのアクセスが比較的多いページや主要なページを対象に、モバイル フレンドリーかどうか是非チェックしてみてください。モバイル フレンドリーと確認できれば、ひとまず4月21日以降に向けては一安心といったところでしょう。しかし、果たして本当にそれで安心したままで良いのでしょうか? モバイル フレンドリーでありさえすれば、モバイル対応は完璧と言えるのでしょうか?
モバイル フレンドリーかどうかは、Webページがモバイルデバイスに対応しているという品質に対し、一種の基準として非常に参考になるものです。しかし、あくまでそれがGoogle独自の目安でしかない点は、認識しておく必要があると思います。また今後、その基準が変わらないという保証はなく、今よりも判定基準が厳しくなる可能性も考慮すべきでしょう。
そもそも、モバイルとそれ以外の境界は、日増しに曖昧になっています。スマートフォンであってもPCに迫る高い画面解像度をもつ製品はありますし、またPCであってもタッチスクリーンを備えた製品があります。製品仕様のみならず、それを使ってWebを利用するスタイルもさまざまです。移動中やスキマ時間にのみスマートフォンを使い、他の場所ではPCないしタブレットを使う方もいれば、スマートフォンしか所有しておらず、それ一台でWebアクセスが必要なすべてをこなすという方もいるでしょう。またWebブラウザではなく、SNSなどのアプリからばかりWebを利用している方が増えているかもしれません。
ウェアラブルデバイスやIoT(Internet of Things)、WoT(Web of Things)の可能性が取りざたされるのを目にする機会は、確実に増えています。そうしたなか今日のWebデザインは、ユーザー / デバイス / コンテキストそれぞれの多様化にどう応えるか、またユーザーの必要とする情報をプル型のみならずプッシュ型でどう届けるかといった命題を、突きつけられています。モバイル フレンドリーか否かという点に拘泥することなく、そのすぐ先に待ち受けている未来にどう備えるべきかが問われている、とも言えるでしょう。1年前にコラム『マルチデバイス対応における「三本の矢」』で記した3つの品質、すなわち
- アクセシビリティ
- マルチスクリーン・デザイン
- 高速な表示パフォーマンス
は、不可知の未来においても極めて重要な品質として、あらゆるWebコンテンツに求められ続けると私は考えています。
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