W3CがARIA in HTMLの最初の草案を公開
アクセシビリティ・エンジニア 黒澤4月14日、W3CはARIA in HTMLの最初の草案を公開しました。この仕様はHTMLでWAI-ARIAを使った場合に、制作者と適合性チェッカー(Conformance Checker)が守らなくてはならない要件をまとめています。
HTMLでWAI-ARIAを利用する際の要件は、HTML5では仕様そのものに記述されています(3.2.7、日本語訳)。しかし、2015年4月13日付とされているHTML 5.1の草案では、該当部分(3.2.7)はARIA in HTMLとHTML Accessibility API Mappingsを参照するように変更されています。HTML Accessibility API Mappingsはブラウザーなどの要件を定めた仕様ですので、制作者は今後、ARIA in HTMLを参照してゆくことになるでしょう。
現時点ではHTML5とARIA in HTMLに大きな違いはありませんが、細かな変更点はいくつかあります。この記事ではそれらの変更点の1つを取り上げます。その変更点はUsing WAI-ARIA in HTML(日本語訳)にも影響します。Using WAI-ARIA in HTMLは、HTMLでWAI-ARIAを利用する際に非常に参考になる文書です。
さて、Using WAI-ARIA in HTMLの2014年6月26日付草案では、暗黙のARIAセマンティック(HTMLの要素や属性がもともと持っているセマンティック)であっても、ブラウザーがサポートしていないものについては、制作者がWAI-ARIAのrole属性やaria-*属性で指定するべき、という記述がなされています。つまり、<main>
ではなく<main role="main">
と記述することを推奨しています。どの要素や属性で、暗黙のARIAセマンティックを制作者が指定すべきかはRecommendations Table(リコメンデーションテーブル)にまとめられています。
しかし、ARIA in HTMLでは、制作者は暗黙のARIAセマンティックをrole属性などで指定すべきではない(SHOULD NOT)、また、指定することは推奨されない(NOT RECOMMENDED)ことであるとしています。つまり、<main role="main">
ではなく<main>
と記述することを推奨しています。また、Using WAI-ARIA in HTMLのEditor's DraftにおけるRecommendations Tableの節は、ARIA in HTMLの該当箇所を参照、という文に変わっており、制作者が暗黙のARIAセマンティックを指定すべき、と表現している部分はありません(GitHubでの変更記録)。また、HTMLの適合性チェッカーの1つであるNu Html Checkerでも暗黙のARIAセマンティックを使った場合には警告を出そうという議論がなされています。
この変更の背景には、ブラウザー側での実装が進んでいることが挙げられると思います。長らく実装が進まなかったInternet Explorer(/Project Spartan)でもWindows 10に向けて実装が進んでいます(Internet Explorer Web Platform Status and Roadmap)。ただし、古いInternet Explorerをどう考えるか、という問題も残っています。ARIA in HTMLへのコメントはメール(public-html@w3.org)もしくはGitHubで送ることができます。ご意見のある方はぜひフィードバックを送ってみてください。