再確認しておきたい改正障害者差別解消法の要点
エグゼクティブ・フェロー 木達 一仁先日、当社がスポンサーとして協賛したリアルイベント「Web担当者Forum ミーティング2024 秋」において、「施行から半年……正しく理解し、取り組めていますか?改正障害者差別解消法とWebアクセシビリティ」と題した講演を行いました。
その録画は現在、12月13日(金)18:00までの期間限定で、オンデマンド配信中です。遠隔にお住まいであったり当日のご都合がつかず、参加を見送られた方もいらっしゃると思いますが、ぜひこの機会にオンデマンド配信で録画をご覧ください。
今回の講演は、録画(質疑応答を除く40分ほど)をすでに公開中のセミナー「改正障害者差別解消法とWebアクセシビリティ」をアップデートするかたちで行いました。本コラムでは、講演のなかでとくに強調した2点を、再確認しておきたい改正法の要点としてご紹介します。
合理的「配慮」ではなく合理的「調整」
障害者ドットコムに今年4月、芥川賞作家・市川 沙央 氏へのインタビュー記事が掲載されました。その最後に、改正法に対して思うところをたずねられた市川氏は、次のように答えています。
作家としてここは『言葉』について語ります。『合理的配慮』という訳はほとんど誤訳と言ってよく、今からでも『合理的調整』とするべきだと考えています。
また静岡県立大学の名誉教授で、長年にわたり国内外で障害者政策に携わってこられた石川 准 先生は、今年6月に催されたセミナー「読書バリアを解消する電子書籍とは」において、「読書における障害者差別解消の推進について」と題した講演を行いました。
そのなかで、石川先生も「合理的配慮とは合理的調整のこと
」としており(PDFファイルで公開されているスライドの15ページ目を参照ください)、やはり市川氏と同様に「配慮」を「調整」に読み替えるべきとしていました。
配慮という言葉から、ともすると事業者から障害当事者への一方通行的なニュアンスを感じ取る方がいらっしゃるかもしれませんが、決してそうではありません。改正法が事業者に対し義務化した合理的配慮の提供には、障害者との双方向のコミュニケーションが不可欠なのです。
障害者との対話を開始するための環境づくり
上述の双方向のコミュニケーションは、障害者差別解消法の文脈において、建設的対話と呼ばれています。政府広報オンラインの事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化という記事から、一部を引用します。
合理的配慮の提供に当たっては、社会的なバリアを取り除くために必要な対応について、事業者と障害のある人との間で対話を重ね、共に解決策を検討する「建設的対話」が重要です。障害のある人からの申出への対応が難しい場合でも、障害のある人・事業者の双方が持っている情報や意見を伝え合い、建設的対話に努めることで、目的に応じて代わりの手段を見つけていくことができます。
Web担当者の方のなかには、改正法の施行に合わせてWebアクセシビリティの向上に取り組みはじめたり、既存の取り組みを強化された方がいらっしゃると思います。もちろんそれは環境の整備として必要なことですが、それよりも先に取り組むべき大事なことがあります。
それは、障害者の方と建設的対話を開始するための環境づくりです。たとえば今あるWebサイトの問い合わせフォームがアクセシブルではなく、障害者の方にとって使えない・使いにくい状態にあっても、別のコミュニケーション手段としてメールアドレスや電話番号がサイトに掲載されていれば、対話を開始できるかもしれません。
どのような手段をどれだけ用意しておけば必要十分か、に一律の正解はないと思います。しかし、Webアクセシビリティの改善には一定の時間的・費用的コストが必要になることが少なくないため、コミュニケーション手段をWebに集約しているB2C事業者の皆さまはとくに、Web以外の手段の確保にご注意いただけたらと思います。
仮に頼れるコミュニケーション手段がなければ、対話を開始することなく障害者の方は類似のWebサイト、その事業者にとっての競合サイトへと離脱してしまうことでしょう。そしてそれは、障害者に限って起こり得る話ではありません。数字にはあらわれずとも、Webサイトが使えない・使いにくいことでユーザーなり顧客を潜在的に失っている可能性に、くれぐれもご注意ください。
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