Emetrics Summit参加報告−Web Analyticsの地平は限りなく−
ミツエーWebコンサルティング 西川 季宏Emetrics Summitとは
10月のワシントンDCといえば、紅葉の美しさを見逃す訳にはゆきませんが、Web Analyticsに携わる人々であれば、今年の10月のワシントンDCの最大の見所といえば10月16日から18日まで開催されたEmetrics Summitを第一に挙げることでしょう。
Emetrics Summitとは、Web Analyticsの発展のために精力的な活動を行っているWeb Analytics Association(WAA)が中心となって行われている、Web Analyticsに関する世界でも最大規模のイベントです。Web Analyticsというのは聞き慣れない言葉ですが、WAAによる定義を引用すると、「Webの利用状況を理解し改善するために、Internetのデータを測定、収集、分析、報告すること」とあるように、アクセス解析だけでなくInternetに関するさまざまなデータを利用した分析手法全般のことを指します。
このEmetrics Summit、欧米各地を巡回しながら開催されていますが、初のアメリカ東海岸での開催となった今回は、Web Analyticsの専門家、コンサルタントや、一般企業・各種団体のマーケティング担当者、Web担当者など約450名参加し、70以上のプレゼンテーションを通じてWeb Analyticsに関する理解を深め、昼食会や親睦会を通じて、互いの意見を交換し、交流を深めました。私は、3日間の本イベント及び本イベント前日のWAA Training Dayを合わせて、合計4日間このイベントに参加しました。全体を通じて感じたことを、自分の問題意識と照らし合わせながら、以下に書いてみたいと思います。
深化するWeb Analyticsの役割
このEmetrics Summitで私が強く実感したのは、Web自体の役割が大きくなるに連れて、Web Analyticsの役割そのものも深化している、ということです。Web Measurement Hacksの著者でもあるEric.T.Peterson氏は、「Web Analytics Business Process」というプレゼンテーションで、「アドホックなプロセスとしてのWeb AnalyticsからビジネスプロセスとしてのWeb Analyticsへと徐々に移行する。」と述べていました。これは今後Web Analyticsが果たすべき役割を考える上で重要な指摘だと考えます。これからのWeb Analyticsには、(アドホックに対するという意味で)継続性が求められるのはもちろんのこと、より厳密で意味があり、サイトの改善はもちろんビジネス全般の改善に繋がることが求められており、その方法が模索されています。
またこの深化は、技術的な側面から見ると、Web Analyticsのツール群と、CRM(Customer Relationship Management)やBI(Business Intelligence)といったシステムとの統合というかたちで現れようとしています。この動向に関する今後の戦略や、ケーススタディについてのプレゼンテーションも活発に行われ、今後この動きはさらに加速化すると感じました。
A/Bテストと多変量解析への関心
また全体を通じて、A/Bテストと多変量解析に対する関心が非常に高いことが印象的でした。この2つの手法は共に、画像やテキスト、レイアウトなどページの構成要素を動的に入れ替えながらどのパターンの構成が最も効果的なのかを検証する手法です。日本では同様の手法を、LPO(Landing Page Optimization)として紹介されることが多いですが、アメリカの場合、Landing Pageであるかどうかに関係なく、サイト最適化のために広く使われるものという認識が強いようです。
中でも多変量解析は、より効率的に最適なパターンを探索するため、タグチメソッドという品質工学の手法を用いることが一般的になっています。役に立つ手法をさまざまな領域から調べ、取り入れようという積極的な姿勢は、アメリカの方が日本よりも徹底していると感じました。
現場に戻って
この他、非常に多くの知識や手法、フレームワークを学ぶことができました。これらを生かしてサービス強化・構築を図るのは、当初想定以上の成果を上げることができそうです。今後の弊社サービス展開に、引き続きご期待下さい。また、なるべく多くのTipsをBlogなどを通じて広く共有してゆきたいと思います。
それにしても、このイベントに参加したことで、Web Analyticsという概念がここまで自分の中で整理されるとは正直思いませんでした。帰国直後は意識していなかったのですが、実際に現場の仕事に戻ってみると、今までになかった見方で自分が物事を捉えていることに気が付きます。The Big Pictureというのが今回のEmetrics Summitのサブタイトルですが、まさにそのような大きな俯瞰図を与えられたかのようです。
Ask really good questions
最後に、WAAの主催者であるJim Sterne氏の基調講演で、イベント中に参加者にして欲しいこととして"ask really good questions"と述べていたことに触れたいと思います。Web Analyticsに関して、良い質問をするには、徹底的に対象を分析して本質を見通す洞察力が必要になるでしょう。決して特別なものではありませんが、こうした力を付けるには地道な努力が必要です。Web Analyticsの将来に貢献するための、自分自身の個人的なテーマとして、胸に刻んでおきたいと思います。
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