TPAC 2015 現地レポート4
アクセシビリティ・エンジニア 黒澤引き続きTPAC 2015に関する記事をお届けします。4日目の10月29日も各Working Groupのミーティングが行われました。この記事ではAccessible Platform Architectures Working Group(APA WG)のミーティングの内容の一部を紹介します。
APA WGはProtocols and Formats Working Group(PF WG)が分割してできた、2つのWorking Groupのうちの1つです(もう1つはARIA WG)。APA WGは他のWorking Groupが検討している仕様などのレビューや研究開発などを行うWorking Groupです。
APA WGのミーティングではWeb Technology Accessibility Guidelines(WTAG)の紹介がありました(WTAGという名前は今後変更されるかもしれないとのことです)。WTAGは技術仕様そのもののアクセシビリティに関するガイドラインとして検討されているものです。
W3Cでは様々な仕様を標準化していますが、制作者が仕様に沿ってコンテンツを作っても、そのコンテンツがアクセシブルにならないのであれば、制作者もユーザーも困るだけです。例えば、画像を扱える仕様で画像に代替テキストを指定する仕組みがなければ、その仕様を使って画像をアクセシブルにすることは困難でしょう。つまり、仕様にはアクセシビリティを確保するための仕組みが必要なのです。
一方、文字の色や背景色を指定できる仕様では、ユーザーエージェント(ブラウザーなど)がハイコントラストモードをユーザーに提供できるのであれば、コンテンツがハイコントラストモード機能を実装する必要はありません。つまり、仕様はアクセシビリティの確保をユーザー、ユーザーエージェント、コンテンツのどこで行うのか検討し決定する必要があります。
このように、技術の仕様を標準化する場合にはアクセシビリティに関して検討すべきことが多々あります。WTAGでは仕様の策定者向けにそれらをまとめたガイドラインを目指しているとのことです。また、ガイドラインをもとにしたチェックリスト(Web Technology Accessibility Guidelines Checklist)も検討されています。チェックリストは「もし仕様に~の機能があれば、~をする仕組みが仕様に必要です」のように記述されています。
ガイドラインやチェックリストが整備されることで、仕様策定者が早い段階でセルフチェックできるようになると良いと思います。一方で、W3Cでは様々なWorking GroupやCommunity Groupで数多くの仕様を検討されており、これらの仕様をAPA WGがどのようにレビューしていくかは、大きな課題だと感じました。