アクセシビリティは誰を対象としているのか
アクセシビリティ・エンジニア 畠山アクセシビリティ対応について学び始めると、それは高齢者や障害者向けの対応である、と思ってしまう方も多いのではないでしょうか。私も最初は、高齢者や障害者への配慮が主なのだろうか、と思ったことを覚えています。
初めてアクセシビリティについて学んだ際、特に印象に残ったのがスクリーン・リーダーを使用してWebサイトを見ているユーザーは代替テキストがなければその画像が何の画像かわからない、ということでした。目的地への道順が画像のみで提供されていた場合、スクリーン・リーダーのユーザーは画像の内容がわからないため、目的地までの道順を知ることができません。この説明だけで、適切な代替テキストを記載するとより多くの人がWebサイトを利用できるようになる、というイメージがわきました。そして、アクセシビリティ対応を行うと高齢者や障害者もWebサイトの情報を取得しやすくなるんだな、という印象が強まりました。
また、アクセシビリティを確保するためのガイドラインとして、日本ではJIS X 8341-3:2016(Webアクセシビリティ基盤委員会による解説)が公示されています。こちらの正式名称は、「高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス-第3部:ウェブコンテンツ」となっています。ガイドラインの名称に高齢者や障害者という言葉が入っているため、アクセシビリティは高齢者や障害者のために確保する、という印象を持ってしまう方も多いのではないかと思います。
しかし、アクセシビリティ対応は高齢者や障害者のためだけに行うものではありません。アクセシビリティ対応をすることは、様々なユーザーにとってとても有益なことなのです。
例えば、通信速度制限がかかっている状況でWebサイトを閲覧した経験をお持ちの方も多いと思います。私も通信速度制限にかかった状態でWebサイトの閲覧をしたことがありますが、その際、画像が表示されるまでに時間がかかりました。そういった状況でも、適切な代替テキストが指定されていれば、画像が表示されるまで待たなくても代替テキストを読むことでページ内の情報を読み進めることが可能です。急いでいる状況でも画像の表示を待たずに情報を取得できるといった利点があり、代替テキストは様々なユーザーにとって便利なものなのです。
他にも、フォームの入力欄にきちんとラベルがついていれば、ラベル、もしくはフォームの入力欄のどちらかを選択することで入力可能になります。これはスマートフォンのような小さい画面ではとても便利です。タップ領域が狭いせいでなかなか目的のものをタップできないという経験をしたことのある方は多いのではないでしょうか。私も移動中の電車内など、安定していない場所でスマートフォンを操作することがありますが、そういった場面ではなかなか目的のものが選択できず、苦労をしたことがあります。このように、スマートフォンを利用する場面は様々です。操作のしづらい場面でも、タップ領域を広くすることで操作性があがります。これはどんなユーザーにとっても有益と言えるでしょう。
アクセシビリティという言葉を聞いたばかりの方や、これから勉強する、という方もまだまだたくさんいらっしゃると思います。最初のうちは私のように高齢者や障害者向けの対応なのか、と思ってしまうかもしれません。しかし、アクセシビリティは全てのユーザーのためにあります。アクセシビリティは誰もが使える、使いやすくなるための対応なのです。