「電子図書館から考える!情報アクセシビリティをめぐる最新動向」に登壇
エグゼクティブ・フェロー 木達先だって、11月7日から9日にかけて、パシフィコ横浜を会場に第19回図書館総合展が開催されました。事前に当アクセシビリティBlogでは告知しておりませんでしたが、その中で最終日に行われたフォーラム「電子図書館から考える!情報アクセシビリティをめぐる最新動向」に、私は登壇させていただきました。奇しくも同日、米国サンフランシスコではW3C Publishing Summit 2017が催されるというタイミングでのことでした。
冒頭、株式会社図書館総合研究所の特別顧問でいらっしゃる植村 要様より趣旨のご説明があり、Webのアクセシビリティと書籍のアクセシビリティ、両分野のあいだの距離が縮まってきた背景をお話ししてくださいました。それを受けて、私は基調講演という位置付けで「Webと出版の融合で高まる情報アクセシビリティ向上への期待」と題した講演を行いました。
以前、コラム『「EPUBアクセシビリティ診断」サービスのリリースに寄せて』でも書かせていただきましたが、電子出版物向けに今後の高い普及が見込まれるフォーマットに、EPUBがあります。EPUB出版物とは、Webコンテンツを一定のルールに基づきパッケージ化したものであり、Webのアクセシビリティにおいて培われてきたノウハウや、Webに対応した支援技術等を応用しやすいと自分は考えています。従い今後、Web技術を仲立ちとしてWebと出版が融合することにより、情報アクセシビリティは飛躍的に高まり、結果として社会全体が豊かになるはず......といったお話をさせていただきました。
基調講演に次いで、大日本印刷株式会社 hontoビジネス本部 部長でいらっしゃる盛田 宏久様に進行役を務めていただき、先述の植村様、そして大日本印刷株式会社 hontoビジネス本部の花田 一郎樣と、電子図書館サービスのTRC-DLを中心に据えつつ、電子図書館および電子書籍の現状や今後について、幅広くディスカッションを行いました。大きくは3つのテーマ、すなわちWebサイト、コンテンツ、それにビューワーそれぞれに関し意見交換をしましたが、図書館/書籍がご専門の皆様とWebが専門の私との対話を通じ、現状の電子書籍がもつアクセシビリティ上の課題について、手前味噌ながら興味深い議論ができたと思います。
中でも、私が今後特に必要と考えているのは、コンテンツの提供側のみならず、障害当事者を含むユーザー、標準化団体、そしてビューワーや支援技術(スクリーン・リーダー等)のベンダーの皆さんが、電子書籍アクセシビリティの向上という同じゴールを共有したうえで、深く連携をすることです。単に、Webがその種の連携を通じアクセシビリティを高めてきたからのみならず、そのような連携なくして、例えばコンテンツの正しい読み上げの実現に対し、どの立場がどの程度のコスト捻出を是として実現すべきかと言った落とし所を見つけにくい、と考えるからです。
なお、ディスカッションの内容については後日、書き起こしのうえ公開の予定と伺っています。当日参加された方も、そうでない方も、ディスカッションの内容に興味がございましたら、今しばらくお待ちいただきたいと思います。公開の暁には改めて、当アクセシビリティBlogでご案内します。