スクリーン・リーダーを使ってアクセシブルなPDFを作成する
アクセシビリティ・エンジニア 辻今回は、全盲でスクリーン・リーダー利用者の私が、お客様に提出するPDFの資料をどのように作成しているかをご紹介します。
一昔前、PDFは私をはじめとしたスクリーン・リーダー利用者にとって苦手な情報源でした。 内容を読みたくてもアクセシビリティの設定が適切に行われていないために中身がうまく読み上げられなかったり、読み上げられたとしても文書構造が分かりにくくて目的の情報が把握できなかったりと、できれば避けて通りたいような存在でした。
そのPDFを、まさか自分自身がスクリーン・リーダーを使って作成できる日が来るとは、そして私にとってアクセシブルなPDFが比較的簡単に作成できるようになるとは、10年ほど前は想像すらできませんでした。
今回ご紹介する方法では、以下のような手順でPDFを作成します。
Markdownで原稿を作成する
Markdownの詳細説明は省略いたしますが、例えばお客様との打ち合わせのためのアジェンダを作成する場合、Markdown記法を用いて以下のようなファイルを作成してagenda.md(UTF-8形式)のような名前で保存します。
% 株式会社Hogehoge様\
2018年7月お打ち合わせアジェンダ
% 株式会社ミツエーリンクス
% 2018年7月3日
- 日時
- 2018年7月5日 (木) 16時00分~17時00分
- 場所
- 株式会社Hogehoge会議室
- 資料
- 本アジェンダ
- 添付資料1
# 今月の議題
1. 議題1
2. 議題2
3. 議題3
4. その他
- 次回打ち合わせ日程
- その他確認事項
Pandocを用いて原稿をMicrosoft Wordのドキュメントに変換する
私は現在、以下のようなコマンドで上記のMarkdownのファイルをMicrosoft Wordのドキュメントに変換しています。
pandoc -s agenda.md -o agenda.docx
返還後のWordドキュメントをスクリーン・リーダーのNVDA等で読み上げると、見出しやリストといった文書構造を持ったアクセシブルなドキュメントができていることがおわかりいただけるかと思います。
Microsoft WordでドキュメントをPDFに変換する
上記で作成したWordドキュメントをPDFとして保存すれば、そのままでもアクセシブルなタグ付きPDFができあがります。
私はこうして作成したPDFをお客様にお送りして会議に臨んでいます。 もちろん、お客様にPDFを見ていただき、修正が必要な場合は自分で上記のMarkdownを編集して再度変換すれば、同じようなアクセシブルなPDFが作成できます。
おそらく、他にもスクリーン・リーダーの利用者がアクセシブルなPDFを作る手段はいくつかあると思いますが、今回は私が普段PDFを作成している方法をご紹介しました。
最後に、私が聞いたことのあるもっともユニークなPDFの読み上げ音声をご紹介します。 Terrill Thompson氏が公開されているMan With Small F(The Inaccessible PDF Song)で、以前はこんな風に読み上げられるアクセシブルでないPDFがたくさんあったなあと時々懐かしくなることがあります。