CSUN 2019 最終日レポート
アクセシビリティ・エンジニア 畠山最終日も聴講したセッションの中から、印象に残った点をレポートします。
Where Accessibility Lives: Incorporating A11y into your Process and Team
これまでアクセシブルなコンテンツを提供していると思っていたチームが、ユーザーから「操作できない」「欲しい色を選べない」といったフィードバックを得たときに、いったいどうすればアクセシブルなコンテンツを制作できるのか、ということを具体的なシナリオを交えて話すセッションでした。
これまでアクセシビリティの対応をしてきたつもりが、それとは反対のフィードバックをユーザーから得ると、誰でもとまどいます。どこから手を付ければ良いのかわからない、と思うこともあるでしょう。大切なのは、完璧を目指すのではなく、より良くすることを心がけることだとDerek Featherstoneさんは言っていました。
「完璧」という言葉には、完成された、もう修正が必要ない印象があります。また、完璧を目指そうとすると、あまりのハードルの高さに挫折してしまうこともあるでしょう。ですが、アクセシビリティは一度対応すればそれで終わりではありません。より良いものを提供することを目標にすることが重要ですし、デザイナーや開発者のモチベーションにもなります。
WCAGなどの基準に沿うことを求められると、すべての基準を満たすことを目標にしがちですが、それよりもより良いコンテンツを目指して少しずつ進めるようにすることが重要なのだとあらためて思いました。
Automating New and Improved United States Government Requirements
このセッションはとてもインタラクティブで、リハビリテーション法第508条(以下Section 508)のことや政府の動きなど、発表者と参加者みなさんの間でたくさんの意見や情報の共有がなされていました。
その中で特に今後に向けて注目すべきだと感じたのは、政府は今後、VPATに記載されている内容を確認するようになる、ということです。これまでは、VPATによっては、きちんとコンテンツを確認せずにすべての基準に「Supported」と記載していたものも存在していたそうですが、これからは政府による確認が入るため、VPATの内容そのものもさらに正確に記載していく必要があるでしょう。
VPATを作成する際には、Trusted Tester V5という、Section 508に適合していることを確認するテストを実施するためのドキュメントを用いることが可能だそうです。現時点ではまだドラフトですが、2019年の春に発表予定となっています。
Trusted Testerも含め、VPATやSection 508の動向には注目したいところです。
Update on the Accessible Canada Act Bill C-81, a Proposed Law
カナダでAccessible Canada Actが提案されています。提案の内容を作成したDavid MacDonaldさんのセッションを聞きました。
この法案は、連邦政府が管轄しているエリアをバリアフリーにすることを目的としています。法案の中には、Canadian Accessibility Standards Development Organization(CASDO)という、アクセシビリティ基準の検討や提案を担う組織を作ることなどが含まれています。また、組織がこの法律に従っておらず、身体的、心理的、あるいは金銭的被害を受けた場合は個人がそれを届け出ることもできるようになるとのことです。セッションでは参加者の方が、これまではこのような届けを出すことができなかったといったコメントをされていました。この法案が通過すれば、よりアクセシブルな世の中になることが期待できます。
この法案はまだ通過されておらず、2019年10月21日ごろに実施予定の連邦選挙の結果によっては状況が変わる可能性があります。そのため、連邦選挙よりも前にこの法案が通ることを期待しているとDavid MacDonaldさんは話していました。
現在提案されているAccessible Canada Act Bill C-81の内容は、Government Bill (House of Commons) C-81 (42-1) - First Reading - Accessible Canada Act - Parliament of Canadaから読むことができます。
最後に
初めて参加したCSUNでしたが、12日から15日まで、あっという間でした。さまざまなセッションを聞いたり、普段なかなかお会いできない方々と直接お話しする機会を得られたりと、とても充実した4日間でした。今回得た気づきや学びを今後に活かしていきたいと思います。