WebAIMがスクリーン・リーダーに関する調査(8回目)の結果を公開
エグゼクティブ・フェロー 木達今年8月13日に公開した記事、WebAIMが8回目のスクリーン・リーダーに関する調査を開始で触れた調査の結果が公開されました(WebAIM: Screen Reader User Survey #8 Results)。
有効回答数は1,224件で、過半数が北アメリカにお住いの方からのものでしたが、その割合は過去の調査より減っているそうで、結果的にグローバルな調査結果として捉えやすくなっているとのこと。ちなみにアジアに居住している方からの回答も、5.8%含まれていました。
今回の調査結果で目を引くのは、主に使用しているスクリーン・リーダーとしてNVDA(NVDA日本語版 ダウンロードと説明も参照)を挙げる人の割合が、2009年の調査開始以来で初めてJAWSを抜いたことでしょう。両者の差は極めて僅かではありますが、NVDAの人気の高まりを如実に表した結果と言えます。ちなみに障害の有無で結果には差があり、障害当事者がJAWSやNVDAを好む傾向にある一方、そうでない方はAppleのVoiceOverを好むようです。
スクリーン・リーダーと一緒に使われるWebブラウザについても、やはり前回(2017年)とは異なる調査結果が見られます。Internet Explorer(IE)やFirefoxの利用率が下がり、トップに躍り出たのがChromeです。この変化は、スクリーン・リーダーと併用しているかどうかに関係なく、広く一般的なブラウザの利用動向と合致して映りますけれど、それでもなおIEの利用率が14.5%というのは、個人的にはやや高く映ります。
モバイル環境の利用動向について見ますと、プラットフォームの利用率ではiOSが圧倒的のようです。しかし、前回調査と比べiOSがマイナス7ポイントだったのに対し、Androidはプラス6%となっており、iOSの人気に若干の陰りが感じられます。常に右肩上がりで伸びてきたiOSの割合が今回初めて減少に転じたというのは、先のNVDAがJAWSを追い抜いた結果と同じくらい、印象的です。
また、ARIAランドマークロール/リージョンの利用率が過去5回、連続して減少しているのに対し、見出しジャンプのような機能を使って情報を探すという回答が7割弱あったほか、見出しレベルを有用と回答したのが8割以上を占めた結果からは、スクリーン・リーダーのユーザーにとって見出しのつけ方が極めて重要ということが読み取れます。
スクリーン・リーダーを使用している旨をWebサイトないしその運営者に知らせることにどの程度寛容かたずねた設問に対しては、7割以上がComfortable、つまり心地よいと答えていました。これは、そうすることがよりアクセシブルな体験をもたらす前提があってこそと思われますが、オンライン上でのプライバシーを守る動きが高まり続けるなか、そうした前提を設けずにたずねたら結果はどのようになっただろう、というのが個人的には気がかりです。
PDF文書のアクセシビリティについて、重大な問題に遭遇する程度をたずねた設問については、合計すると4分の3近くが問題に遭遇する可能性があると回答。理由や背景は不明ながらも、アクセシビリティが十分に確保されぬまま公開されているPDF文書が少なくない実態が、明らかになったと言えるでしょう。
調査結果の詳細は、ぜひWebAIM: Screen Reader User Survey #8 Resultsをご確認ください。