2020年度WAIC総会参加レポート
アクセシビリティ・エンジニア 中村(直)今年のWAIC(ウェブアクセシビリティ基盤委員会)の総会がおとといの29日(水)に行われました。昨年度に引き続いて、今年度のWAIC総会について、ごく簡単にレポートを記しておきたいと思います。
当社からは、WAIC委員長を務める中村(精)、小出、この記事を書いている中村(直)が参加しました。
ご承知のようにCOVID-19による社会情勢もあり、今年のWAIC総会はCIAJ(情報通信ネットワーク産業協会)に集まっての開催ではなく、Webexを用いてのオンライン開催となりました。
事前にリハーサルが行われたので、大まかな進行自体は滞りなく行われました。しかし、WAICの関係者が一堂に会する総会ではこのような試みが初めてのこともあって、会議システムにログインがうまくできなかったり、別途オンラインで設けた議決方法での投票が難しく口頭で賛否を伝えた参加者もいました。オンラインのシステムにスムーズに参加することに関しては、今後の課題ではあると感じました。
例年、各作業部会(ワーキンググループ)の前年度の活動報告と今年度の活動方針の説明について行われるのですが、基本的には活動計画は前年度の活動を踏襲したものになります。(ちなみに、現在WAICのワーキンググループは4つあり、各ワーキンググループの主な活動内容については、WAICとはからたどることができます)
活動方針に関連して参加者からJIS X 8341-3:2016改正についての質問がありました。JISは原則5年に一度見直しが行われるわけですが、この見直しに向けてWAICとしてのアクションを取る必要があるというのが質問の背景になります。
WCAGを取り巻く環境としては、ご承知のようにWCAG 2.1(WAICによる日本語訳)が2018年に発行されています。しかし、WCAG 2.1はISOではありません。ISOではない以上、JISの原則からしてWCAG 2.1がJISになることはありません。その一方でW3C側の動きとしては、現在策定中のWCAG 2.2をISO化したいという話が持ち上がっているようです(W3C AGWGミーティング議事録)。したがって、このW3Cの動向によって、WCAG 2.0の後続仕様のJIS化が左右される格好になるだろうということが言えます。
また、WAICのルール作りに関する話も総会では取り上げられました。WAICとしての明文化されたルールは現在、規程しか存在しません。規程上、規程の変更はWAICの上位組織である情報通信アクセス協議会の承認が必要であり、細かいルールについて規程に盛り込もうとすると、都度上位組織の承認が必要なことになります。
そこで細かいルールについては、この上位組織による承認が必要でない方法で別途ルールを設けることができるようにする方針についての説明等がありました。詳細については今後、WAICのサイト上で明らかになっていくものと思われます。規程と同様に細かいルールについてもWeb上で公開することになれば、より透明性の高い組織運営が可能になり、組織としての信頼性の向上につながるのではと考えます。
最後に、昨年度は総会の会場で活発な議論が行われたのですが、今年度はオンラインということもあり、少しの質問があっただけで議論はほとんどありませんでした。総会の司会進行を務めた中村(精)から発言がありましたが、このあたりもオンライン開催での難しさであり、よりWAICとしての活動を活発にしていくためにも、特に異なるワーキンググループの参加者間でのコミュニケーション方法について模索することについて、今後の課題と言えそうです。