WCAG 2.2作業草案の更新
アクセシビリティ・エンジニア 中村(直)筆者が先週に夏期休暇を取得していたこともあって本Blogでの紹介が遅くなりましたが、8月11日付けのWCAG 2.2の作業草案について更新がアナウンスされていました(Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.2 Draft for Review | W3C Blog)。前回の公開が2月末でしたから、6カ月ほどの時間が経ったことになります(前回の公開については、WCAG 2.2の最初の公開作業草案が発行されましたも参照ください)。
W3C Blogには9つの新しい達成基準(Success Criteria; SC)が記載されています。以下にLevel別にまとめてみました。
- Level A
- SC 2.4.13 Fixed Reference Points
- SC 3.2.6 Findable Help
- SC 3.3.7 Accessible Authentication
- SC 3.3.8 Redundant entry
- Level AA
- SC 2.4.11 Focus Appearance (Minimum)
- SC 2.5.7 Dragging
- SC 2.5.8 Pointer Target Spacing
- SC 3.2.7 Hidden Controls
- Level AAA
- SC 2.4.12 Focus Appearance (Enhanced)
これら達成基準の日本語の試訳については、Website Usability Info改めAccessible & UsableさんがWCAG 2.2 Working Draft (2020年8月11日版)として前回の草案同様に公開していますので、そちらもあわせて参照するとよいでしょう。
なお、SC 2.4.7 Focus VisibleがLevel Aに変更になっているのは前回同様です。ちなみに、前回の草案で2.4.11 Focus Visible (Enhanced)とあったものは、Focus Appearance(Minimum/Enhanced)と名前を変えて2つになったようです。
まだ全てについて詳細には目を通せていないのですが、SC 2.5.8 Pointer Target SpacingについてはNOTEにエディターによる注記が見受けられ、まだ達成基準として詰め切れていない印象を受けました。
前述のW3C Blogによると、今回の作業草案の更新をもって、WCAG 2.2でのこれ以上達成基準の新規追加はないとのことです。この作業草案へのレビューコメントは、9月18日までに行ってもらいたいとのことです。
また、現在のところ、WCAG2系列の後続(たとえばWCAG 2.3)を開発するつもりはないとも記されています。これについては含みを持たせているあたり、WCAG 2.3が策定されることがありえるかもしれませんが、ワーキンググループとしては作業中の次世代のガイドラインである"Silver"に労力を割きたいところではあるのでしょう。
最後にWCAG 2.2の勧告については、2021年の中旬には発行したいとのこと。WCAG 2.1が勧告されたのは2018年ですから、それから3年で新たに達成基準が追加されるというビジョンが現実味を帯びてきました。引き続きWCAG 2.2について注視していきたいと思います。