WCAG 2.1達成方法集の更新について(2021年7月)
アクセシビリティ・エンジニア 中村(直)WAIC(ウェブアクセシビリティ基盤委員会)から告知されているように、WCAG 2.1 達成方法集の更新がされています(WCAG2.1達成方法集 更新のお知らせ)。
今回の更新により、未翻訳であったWAI-ARIAに関する達成方法の全部と、HTMLの達成方法の一部が日本語訳になっています。WCAG 2.1 達成方法集の全体を見渡してみますと未翻訳の箇所のほうが多い状態ですが、逐次日本語訳の更新がされていくと思います。
なお、WCAG関連文書を翻訳しているWAICのワーキンググループでは、翻訳作業に協力できる方を募集しています。前述のWAICによるお知らせのページに詳細が記載されていますので、興味がある方は一読してみてはいかがでしょうか。
ところで、WAICでのリリースでは言及されていませんが、WCAG 2.1 解説書についても、更新が行われています。解説書については、原文が2019年3月から2020年12月のものに、部分的に更新がされています。
解説書の更新に関しては、基本的には、WCAG 2.0からあった達成基準についての解説に対する編集的な変更にとどまっていますが、2点取り上げたいと思います。
1点目は、解説書からFlashの達成方法へのリンクがすべて削除されています。周知のこととは思いますが、Adobe Flash Playerのサポートは終了しています。これにともない、達成方法集の原文にあたるTechniques for WCAG 2.1でもFlashに関する達成方法も存在しないためにこういった状況になっています。
2点目は、解説書の2020年12月版への部分的な更新に伴って、Understanding ACT Rulesというページが増えています(現時点では原文のまま掲載されています)。これは、以前のWCAG 2.1解説書には存在しなかったものです。ちなみに、ACTというのはAccessibility Conformance Testingの略称で、ACT Rulesにごく簡単に触れますと、WCAGなどのアクセシビリティ標準へのWebコンテンツの適合性をテストするためのルールを文書化するというものです(W3CのAccessibility Conformance Testing (ACT) Overviewも参考になります)。
ACTについて、筆者はその存在を認識していたものの、内容を理解するまでは至ってはいないというのが実情です。しかしながら、WCAG 2.1解説書でこうして言及されているわけですから、ひととおり内容を理解する必要があると改めて感じている次第です。