テキストによる伝わりやすい経路説明とは
アクセシビリティ・エンジニア 大塚突然ですが、記事をご覧の皆さんが初めて訪れる場所へ徒歩で移動する場合、経路に関する情報をどのように確認するでしょうか。Googleマップをはじめとするアプリの徒歩ルート案内を利用する方も多いかと思います。実は私を含めた視覚障害者も同じようにGoogleマップなどの経路説明を目的地を探す際に活用することがあります。
徒歩での経路を案内するアプリの中には、主に視覚障害者が利用することを想定して開発されたアプリがいくつかあり、2月末にはスマートフォンのGPSなどから周辺の情報を読み上げるMicrosoft Soundscapeの日本語版がリリースされました。このアプリは、3Dオーディオ技術を使い周辺の建物や目的地として設定した場所を読み上げるため、より直感的に読み上げられた場所の方向を把握することができます。
しかし、残念ながら特に初めての場所を訪れる際にこれらのアプリを使用するだけでは、目的地にたどり着くのは難しい場合が多くあります。具体的には、経路上で目印となるような建物や横断歩道についての情報が十分に得られず、事前に経路全体をイメージしづらい、GPSの誤差により別の建物を目的地と勘違いしてしまうといったことが考えられます。さらに、視覚障害者特有の問題として、当日移動する際アプリの案内を聞きつつ、周囲の歩行者や車、障害物などさまざまなものに意識を向けながら歩く必要があります。
こうした課題を解決する方法としては、何かしら別の手段を組み合わせて目的地へと向かうというものがあるでしょう。複数のアプリを組み合わせて利用する、周囲の人に聞くなど考えられる方法はいくつかあるのですが、今回は事前に経路に関する情報を把握する手段として、交通アクセスのページなどに記載されているテキストによる経路の説明に注目します。
企業やホテルなどの交通アクセスのページには、Googleマップや地図の画像のほかに、テキストにより経路が記載されていることがあります。この情報が適切に記載されていると、特に視覚障害者のユーザーが初めて場所を訪れる際に非常に役立ちます。では、どのような情報が記載されていると良いのでしょうか。本記事では一例として、ミツエーリンクスの本社への交通アクセスのページに書かれている丸の内線西新宿駅からの道順を参考に、私が実際に役立った項目、記載されているとより分かりやすいと感じた項目をお伝えします。
まず、経路案内のスタート地点を示すできるだけ正確な情報です。駅の改札や出口の名称が記載されていると、事前にスタート地点までの経路を調べることができ、当日によりスムーズに、安心して移動することができます。ミツエーリンクスのページを確認すると、西新宿駅の出口1からの道順であることがわかります。
次に、歩く方向や目的地やランドマークの方向についての情報です。そもそもどの方向へと歩けば目的地へと向かうことができるのか、目的地がどちら側にあるのかを把握できると、事前に経路をイメージしやすくなります。ミツエーリンクスのページを確認すると、直接どちらの方向へと進むべきかについては記載されていません。しかし、オフィスが入る新宿グランドタワーが右手にあることが書かれており、特に信号や横断歩道については書かれていないため、駅の出口を出てから右方向へと直進すると目的地へとたどり着けるのではないかと想像できます。
最後に、信号や横断歩道、コンビニといった経路上で目印となるような情報です。こうした情報により、正しい経路を進めていることを確認したり、周囲の人に経路を確認する際に参考情報として伝えることができます。ミツエーリンクスのページにこうした情報は記載されていません。コンビニや飲食店などの名称を記載するとより分かりやすくなるのではないでしょうか(ページへの記載については検討中です)。
今回はいち全盲ユーザーの視点から、伝わりやすいテキストによる経路の説明について記載事項の一例を紹介しました。Googleマップのナビゲーション機能や冒頭で紹介したSoundscapeなど、視覚障害者の目的地への移動をサポートする仕組みが増えてきつつあり、ナビゲーションの精度も日々高まっているように感じていますが、まだまだ課題があるというのも現状です。
住所とGoogleマップのみが貼り付けられた交通アクセスページをよく見かけますが、プラスしてテキストによる詳しい経路説明が掲載されているとより安全に目的地へと向かいやすくなります。こうした誰もがアクセスしやすくなるよう、配慮されたページが増えていってくれることを願います。