Web Almanac 2022に見るWebアクセシビリティ
アクセシビリティ・エンジニア 中村(直)今年の1月にWeb Almanac 2021に見るWebアクセシビリティという記事を書きましたが、もととなるWeb Almanacの2022年版が9月末に発行されています。2022年版にもAccessibilityの章が存在しており、この章の記述とデータについてざっくりと眺めてみることにします。
総論としては、Lighthouseのスコアの中央値は2021年では82%だったものが2022年のデータでは83%と1ポイント上昇したとのことです。この数値の上昇からは、全体としてWebアクセシビリティがよい方向に向かっていると言えそうですが、別のデータも見てみましょう。
比較的修正が容易であろう、ページの言語(lang
属性)のデータは、モバイルサイトで2021年では80.5%だったものが、2022年では82.7%と、2.2ポイント増加しています。このデータからは、Web全体のWebアクセシビリティは改善の傾向があるという、楽観的な見方ができます。
一方で、少し工夫すればそこまで難易度が高いものではない、見出しの階層のデータに注目してみます。これについては、モバイルサイトで2021年では58.1%だったものが、2022年では57.7%と、0.4ポイント減少しています。このデータではほぼ横ばいと捉えることができ、Web全体のWebアクセシビリティは本質的には改善されていないという、悲観的な見方ができるでしょう。
別のデータも見てみましょう。画像の代替テキストについては、2021年でalt
属性が提供されていたサイトが57.8%であり、2022年では58.7%と1ポイント弱の上昇が見られます。このうちalt
属性を持ち、なおかつ代替テキストの内容にファイル拡張子を含むものは、2021年で7.1%、2022年で7.5%と、0.4ポイントの上昇が見られます。Web Almanacが指摘しているように、代替テキストに拡張子を含む状態は、CMSが機械的に反映している可能性が高いといえます。しかし、これらのポイント数の変化について、alt
属性を自動的に埋めるCMSが増えたために、alt
属性を持つサイトが増えたというわけではないといえます。それ以外の要因がalt
属性を持つサイトを微少ながら押し上げていることは、Webサイト全体としてのアクセシビリティの改善が、微速であるものの前進しているということができるのかもしれません。
動画についてはどうでしょうか。<track>
要素をもつ<video>
要素は1%未満であり、デスクトップサイトでは0.71%、モバイルサイトでは0.65%という結果でした。ただしこのデータには、ポッドキャストやYouTubeなどのコンテンツで一般的な<iframe>
要素をとおして埋め込まれた音声や映像を含んではいませんから、動画について、実際にはもう少しアクセシビリティ対応がなされている可能性はあります。
最後にアクセシビリティオーバーレイについては、デスクトップサイトで2021年の0.96%から2022年では1.6%と伸びを見せています。手放しでは喜べませんが、アクセシビリティオーバーレイが増えていることは、Webアクセシビリティに取り組む必要性に迫られているとも考えられ、少なくともWebアクセシビリティの存在の認知が進んでいる証左と捉えることができると考えます。
まとめますと、マクロ的なWebアクセシビリティとして、Web Almanacのデータからはこの1年で足踏みしているか、わずかな改善が見られるといえます。Lighthouseのスコアを上げることがWebアクセシビリティの対応のすべてではないですが、各々のWebサイトで地道に取り組んでいくことがWebアクセシビリティの改善につながっていくことは確かでしょう。