日本視覚障害者ICTネットワークが第2回支援技術利用状況調査報告書を公開
アクセシビリティ・エンジニア 大塚今年の5月に当Blogで公開した記事、「日本視覚障害者ICTネットワークが第2回支援技術利用状況調査を実施」で触れた調査の結果が公開されました(第2回支援技術利用状況調査報告書)。2021年に行われた第1回の調査結果と比較しながら、個人的に印象に残った点を取り上げたいと思います。なお、1回目の調査結果については、当Blogでも日本視覚障害者ICTネットワークによる支援技術利用状況調査報告書という記事で取り上げています。
調査結果の中で注目したポイントの1つめが、パソコンで使うことがある支援技術をすべて選択する質問においてPC-Talkerを挙げる人がトップとなり、NVDAがそれに続いたことです。こちらについては、第1回目の調査結果と大きな変化はありませんでしたが、改めてPC-Talkerの利用率の高さが明らかになりました。ただ、パソコンで主に利用する支援技術を1つ選択する質問では、前回の調査と比べPC-Talkerを選択している人が減少し、NVDAを選択した人が増加しています。このことから、NVDAをより日常的に利用しているユーザーが増えていることが考えられます。
また、パソコンで利用しているWebブラウザとしては、前回と比較してGoogle Chromeの利用者が大きく増加していました。これは、Internet Explorerや古いPC-Talkerのサポートが終了したことが影響していると思われます。一方、昨年の調査結果とはなりますが、グローバルを対象にWebAIMが実施した調査の結果に目を向けると、Microsoft Edgeの利用率が国内と比べかなり高くなっていることがわかります。利用率が高くなった原因としては、Microsoft EdgeがChromiumベースのものへと更新され、Chromeに近い操作感で利用できるようになったことが考えられます。今後、Chromeの利用率が増加しつつある国内で、Microsoft Edgeの利用率がどのように変化するのかには注目したいです。
最後に個人的に興味深かったのが、Webページ上の「本文へジャンプ」といったスキップリンクを活用しているかを問う質問で、使っていると回答した人が思いのほか多かったことです。具体的には、よく使うと回答した人が38.06%、時々使うと回答した人が41.30%いました。第1回の調査ではなかった質問なので、結果を比較することはできませんが、過去にWebAIMが行った調査の結果などから、Webページ上のコンテンツを探す際には見出し要素やランドマークを活用しているユーザーが多いと予想していただけに意外な結果となりました。
今回取り上げなかった項目も含め、前回と今回の調査結果を比較した個人的な印象としては、おおむね予想していた通りの結果となったように思います。一方、最後に挙げたスキップリンクの利用率については、予想外の結果となりました。私自身も日常的にスクリーンリーダーを利用していますが、支援技術の利用者とひとくくりに言っても、Webページを閲覧する方法は様々であることを改めて実感しました。
調査結果の詳細については、第2回支援技術利用状況調査報告書 | 日本視覚障害者ICTネットワークからぜひご覧ください。また、10月27日には、今回の調査結果を第1回の調査結果と比較しつつ、どういったことが読み取れるのかを考える第2回支援技術利用状況調査結果報告会が開催されるとのことです。調査結果に興味を持たれたという方はぜひご参加ください。