視覚障害者とCAPTCHA
アクセシビリティ・エンジニア 大塚当社からウェブアクセシビリティ基盤委員会に参加し、委員長を務める中村と作業部会2の委員を務める私の2名で、先日マイナビ出版様の雑誌「Web Designing」から取材を受けました。今月17日に発売されるWeb Designing 2023年4月号の「Webアクセシビリティに向き合うべき理由」という特集にて、障害者差別解消法が2021年に改正されたことに関連し、Webアクセシビリティに関する具体的な問題や対応を行う際の基本的な考え方についてお話ししました。よろしければぜひご覧ください。
その中で私から、特に視覚障害者にとってWebサイトを閲覧するうえでの障壁となるのが画像認証やパズル認証をはじめとするCAPTCHAであるとお話ししました。今回はCAPTCHAの変遷や現状の課題について、簡単にまとめたいと思います。
CAPTCHAとは、オンライン上でログインや会員登録といった操作を人間が行っているかを判断するための仕組みです。例えば、複数の写真の中から信号機が映っている画像を選択させたり、パズルを完成させるような画面をご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか。CAPTCHAの中でも、Googleが開発しているreCAPTCHAは、多くのWebサイトで利用されています。
初期のreCAPTCHAを含めたCAPTCHAは、機械的に認識することの難しい歪んだ文字を入力させるというものでした。これは特に視覚障害者にとって確認が困難であり、文字入力の代わりに聞こえた音声を入力するオプションが提供されていました。しかし、この音声についても雑音交じりで英数字が読み上げられるというもので、私自身これまで何度も失敗した経験があります。
その後、reCAPTCHAについては、より直感的に認証が行えるよう、信号機など特定のものが映っている画像を選択させるというものが登場しました。しかし、音声の入力については当初と比べると明瞭に聞こえるようになったものの、英語を聞き取り入力するのは依然として難しい印象でした。
最近では「私はロボットではありません」というチェックボックスをチェックしたり、ページ全体を閲覧する際の一連の操作から、人間による操作であることを判断するというものが増えてきました。この方法では、人間の操作であると判断されれば、画像や音声を確認する必要がなく、視覚障害者にとってのハードルが大きく低下しました。さらに、音声での認証については、「3種類の音の中から、動物の鳴き声であるものを選択する」といった言語に依存しない認証を行うケースもごくわずかですが存在しているようです(私は一度だけ見かけたことがあります)。
そして、より新しい技術に目を向けると、ユーザーが認証を行わずに検証を行うPrivate Access Tokensという仕組みが発表されるなど、将来的にはCAPTCHAを意識せずにページが利用できるようになるかもしれません。
一方、パズル認証が提供されているケースでは、視覚障害者、特に全盲のユーザーにとって利用が非常に困難な状態となっている場合が多いのが現状です。そもそもパズルを完成させるためにはマウスを操作することができ、パズルの状態を視覚的に確認できる必要があります。さらに音声などの代替手段についても提供されていない場合がほとんどです。そのため、特に全盲のユーザーにとっては単独で認証を行うことが困難で、結果としてパズル認証を採用しているサービスそのものが利用できなくなってしまいます。
特に全盲のユーザーにとって単独で対処しようがなかったCAPTCHAについては、当初に比べて問題なく利用できるようになりつつあります。パズル認証についても、代替手段が提供されるなど、セキュリティを担保しつつ利用できるようになってほしいと感じています。