WCAG 2.2の勧告候補が更新(2023年5月版)
アクセシビリティ・エンジニア 中村(直)GAAD (Global Accessibility Awareness Day)にあわせて、5月17日付けのWCAG 2.2の勧告候補(Candidate Recommendation)が公開されました(W3C WAIのツイート)。
前回の1月の勧告候補からの変更点としてはChange Logで2つが挙げられます(1月の勧告候補については「WCAG 2.2の勧告候補が更新されました」もあわせて参照ください)。
変更点の1つはFocus Appearanceで、レベルがLevel AAからLevel AAAに変更され、番号もSC 2.4.11からSC 2.4.13となっています。
Focus Appearanceの達成基準の内容については、1月の勧告候補での達成基準はかなり複雑なものでしたが、今回の勧告候補では、2つの項目に簡素化されています。Level AAAという位置付けを差し引いても、実現性が高まったのではないかと思われます。
Focus AppearanceがLevel AAAに変更されたことに伴って、SC 2.4.7 Focus Visible(フォーカスの可視化)がLevel AAとなり、WCAG 2.1と同じレベルとなっています。WCAG 2.1との互換性という観点から、混乱をもたらす材料が減ったことは好ましいものと捉えることができるでしょう。
もう1つの変更点は、SC 2.5.8 Target Size (Minimum)の明確化です。SpacingとInlineの文言の変更が見えますが、詳細に関してはUnderstanding WCAG 2.2を参照しながら検討する必要がありそうです。
なお、今回の勧告候補では、Focus Appearanceだけでなく、Target Size (Minimum)もat risk(不安定)な機能としてマークされていることに注意が必要です。まだこの2つの達成基準が固まっていないために、少なくとももう一度勧告候補が発行されることが予想されます。
さて、直近で示されている勧告のスケジュールとしては、4月に更新されているWhat We're Working Onのページでは2023年内の予定をうたっている一方で、5月17日付けで更新されているWhat's New in WCAG 2.2 Draftページでは、今年の第3四半期(7月~9月)の予定としています。
第3四半期というスケジュールは最速でステータスを進めた場合になってきますが、ここまでの経緯を見るに個人的にはそう簡単に進むものでもないだろうという感触です。議論が収束しないようであれば、勧告が来年まで持ち越しになる可能性もあるかもしれません。いずれにせよ、9月に行われるW3C TPAC 2023までにどこまで議論を詰めることができるのかが1つの争点になってきそうです。