視覚障害者にとってのオンライン手続きが普及するメリット
アクセシビリティ・エンジニア 大塚転出届の提出やパスポートの更新など、これまで対面で書類の記入が必要とされていた手続きがオンラインでできるようになりつつあります。こうしたオンライン手続きの普及は、視覚障害者にとって様々なメリットがあり、その1つが書類の代読や代筆の必要がなくなることです。
対面での手続きを行う場合、特に全盲や強度の弱視ユーザーは、書類を読んだり記入することが難しい場合が多く、それらを身近な家族や窓口の担当者に依頼する必要があります。その際、家族とはいえプライバシーに関わる内容が知られてしまったり、公の場で個人情報を口頭で伝えなければいけないという懸念があります。また、代読や代筆には時間がかかるため依頼すること自体に申し訳なさを感じることもあり、最低限必要なもの以外は手続きを先延ばしにしたり、あきらめてしまうこともあるのが現状です。
私が過去に経験した事例としては、役所でマイナンバーカードのパスワードを設定した際、タッチパネルでのパスワードの入力が難しいことを伝えたところ、窓口の担当者に口頭でパスワードを伝えるように言われたことがありました。タッチパネルでの入力しか行えない以上そのように対応するほかないのですが、口頭でパスワードを伝えることには抵抗があったため、スマートフォンに表示させたパスワードを入力いただきました。パスワードの設定も含めてオンラインで手続きが行えるようになれば、代読や代筆を依頼することも個人情報などの情報を口頭で伝える必要もなくなります。
しかし、オンラインでの手続きにもまだまだハードルがあると感じることがあります。こちらも私の過去の経験になりますが、新型コロナウイルスのワクチン接種を申し込む際に入力する自治体コード、賃貸契約更新時の契約番号/認証キーなど、手続きを行うためのURLやIDやパスワードが郵送物に書かれており、すぐに手続きを進められなかったというものです。
このような場合、内容を身近な人などに確認してもらうか、スマートフォンのOCRアプリで書類を読み取る必要があります。身近な人に頼む場合、前述したような問題や懸念があり、OCRアプリでは、現状最低限どのような情報が書かれているかを把握できても、様々な情報が書かれた書類からピンポイントで情報を得ることは困難です。
コロナ禍での外出自粛やマイナンバーカードの普及施策などにより、オンラインで行える手続きはここ数年で増加しています。時間や場所にとらわれずに手続きを行えるといった一般的なメリットに加え、視覚障害者にとっても大きなメリットがあるという認識が広がり、さらに手続き全体がより利用しやすくなることを願います。