WCAG 2.2の勧告とWCAG 2.1の更新
アクセシビリティ・エンジニア 中村(直)W3Cからアナウンスされたように、WCAG 2.2が2023年10月5日付けで勧告(Recommendation)となりました。 WCAG 2.1の最初の勧告が2018年ですから、そこから5年が経って達成基準(Success Criterion)が追加されたことになります。
WCAG 2.1の勧告について「最初の」とわざわざ言っているのは、WCAG 2.1が先月に更新されたことによります(W3Cのアナウンス)。 WCAG 2.1の更新の内容はもっぱらエラッタの適用ですが(WCAG 2.1のChange Logも参照)、その中でも達成基準4.1.1について注記が追加されたのが目立った変更点と言えます。
この追記は、端的にはWCAG 2.2では達成基準 4.1.1が削除されているように、達成基準 4.1.1についての評価は別の達成基準で行うようにするという内容です。
さて、WCAG 2.2の話に戻りますと、前回の勧告案(Proposed Recommendation)から今回の勧告での変更点としては、達成基準1.4.12 Text Spacingに注記が加えられています。ちなみに前回のアクセシビリティBlogでWCAG 2.2の勧告案が発行、8月にも勧告へという記事を執筆しましたが、勧告の発行が遅れたのはこの注記周りの作業によるものです。
WCAG 2.1と2.2の技術的な変更点、言いかえるとどのような達成基準が増えているのかについては、What's New in WCAG 2.2を参照してください。
ところで、WCAG 2.2の日本語訳についてどうなるのか気にされている読者もいるかと思われます。筆者が委員として参加しているウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)の翻訳作業部会では、まずは更新されたWCAG 2.1の翻訳に着手し、WCAG 2.1の日本語訳の更新が終わった後に、WCAG 2.2の翻訳に取り組む予定です。
また、ISOの動きに関しては、10月3日で行われたAG WGの電話会議の議事録によれば、
16 oct is deadline for ISO submission, and we will work out what goes into ISO version.
月内にもISOに対してWCAG 2.2を提出するようです(これはW3Cスタッフであり、ISOのリエゾン(連絡)も担当しているKevin White氏の発言です)。
ISOがW3Cから提出されたWCAG 2.2受理すれば、ISOの規格策定プロセスに従って今後作業が進んでいくものと思われます。今後のJIS改定については、ISOの規格策定状況をにらみながら、WAIC内部で検討されていくことになると見込んでいます。