NVDAのオーディオ分割機能を利用してみた
アクセシビリティ・エンジニア 大塚先日リリースされたNVDA 2024.2には、「オーディオ分割」という機能が追加されています(NVDA日本語チームのnote、NVDAのリリースノート)。この機能は、NVDAから出力される音声と他のアプリやOSから出力される音声を左右のチャンネルに分割できる機能で、NVDAキー、altキー、sキーを同時に押すことで切り替えられます。なお、キーを押した際に選択できるモードは、NVDAの音声設定の「オーディオ分割モード切り替えコマンドで使用できるモード」から個別に選択できます。
この機能が追加されるきっかけとなったGitHubのissueには、
When participating to audio-conferences on the computer, it's often confusing to have NVDA's vocal feedback mixed up with the audio stream of the conference. ......With a stereo headset or stereo speakers, it would be handy to have an option allowing to split the audio stream in two parts: • NVDA audio stream on one side, (e.g. left ear) • the rest of the computer's audio stream on the other side (e.g. right ear).
とあり、機能の利用シーンの1つとして、NVDAとオンライン会議の音声を左右のチャンネルに分割し、それぞれの音声が混じって出力されて混乱するのを防ぐことが挙げられていました。
ただ、個人的には、それぞれの音声を同時に聞く必要のあるオンライン会議で、この機能を利用するメリットがあまり思い浮かびませんでした。そこで、実際にオーディオ分割機能を利用しながら、何度か社内のオンライン会議に参加してみました。今回は特に差が出やすいと考えられた、以下3種類の組み合わせで、それぞれの音声の聞き取りやすさやNVDAの操作のしやすさを確かめました。
- 左チャンネルでNVDA、右チャンネルでアプリ
- 右チャンネルでNVDA、左チャンネルでアプリ
- オーディオ分割が無効(通常通り、両方のチャンネルからNVDAとアプリの音声が出力)
利用しているヘッドセットやイヤホンの種類や周囲の音声環境といったさまざまな要因で体感が変わること、何より短時間機能を利用した私の主観が混ざっている点を念頭に置いていただきたいのですが、やはりオンライン会議でこの機能を利用するメリットはよくわかりませんでした。左右から音声が分かれて聞こえるからと言って、音声の聞き取りやすさや作業のしやすさに変化はない印象でした。むしろ、オンライン会議の発言者ごとに音量の違いがあった場合に極端に聞き取りづらくなるなど、デメリットを感じる場面が目立ちました。
とはいえ、前述したように、私は短時間しか機能を利用していません。これまでの経験から、スクリーンリーダーの利用環境が変わった場合、完全に慣れるまではそれなりに時間がかかると考えています。この機能を本格的に長時間利用すれば、オンライン会議中のNVDAでの作業効率を上げられる手だてを見つけられるのかもしれません。
オンライン会議など、それぞれの音声を同時に聞く必要がある場合については上記の通りなのですが、この機能はNVDAの音声は聞く必要があっても、他の音声を聞く必要がない場合に活用できるのではないでしょうか。たとえばYouTubeなどで自動的に動画や音声が再生され、NVDAの音声が聞き取りづらいとき、ショートカットキーで即座にモードを切り替えて、NVDAのみの音声を聞きながら、動画を一時停止したり音量を変更できます。
オーディオ分割機能をオンライン会議で利用した感触としては、予想通りのものとなりましたが、実際に機能を利用することで別の活用方法や、オンラインミーティング中のスクリーンリーダーの利用について考えることができました。今後も、NVDAをはじめとするスクリーンリーダーの新機能を積極的に利用していきたいと思います。