見出しだけではないスクリーンリーダーの読み飛ばし機能
アクセシビリティ・エンジニア 大塚NVDAなどのスクリーンリーダーを利用してWebページを斜め読みする際に利用できるのが、見出し要素間を移動する機能です。Webページに適切な見出し要素が設定されていると、必要ない箇所を読み飛ばして目的のコンテンツを素早く確認することができます。このようなスクリーンリーダー利用者の見出し要素の活用方法については、ご存じの方も多いかもしれません。
しかし、このほかにもNVDAやNetReaderといった一部のスクリーンリーダーやブラウザには、コンテンツを読み飛ばす際に役立つ機能がいくつか存在します。これらの機能は個人的に、見出し要素と比べて話題となることが少なく、Web制作に携わる方だけでなくスクリーンリーダーの利用者にもあまり知られていない印象があります。そこで今回は、見出し要素間の移動以外で、Webページ内を読み飛ばすための機能をご紹介します。
1つ目が、連続する複数のリンクの直後にあるテキストへ移動できる機能です(NVDAの読み上げやNVDAのユーザーガイドでは、リンクブロックやリンクのないテキストと記載されています)。この機能を利用すると、ページ内のリンクの直後にあるテキストへと移動することができ、ナビゲーションメニューや目次など、連続した多くのリンクを読み飛ばす場合に役立ちます。この機能は、NVDA、NetReaderともに[n]キーを押すことで利用できます。
2つ目が、リスト要素やテーブル要素など、内部に要素を含む要素の直後へ移動する機能です(NVDAの読み上げやユーザーガイドではコンテナ要素、NetReaderの読み上げやマニュアルではブロックと記載されています)。コンテナ要素ないしブロックの直後への移動を利用すると、リスト要素やテーブル要素といった、内部に要素を含む要素の直後へと移動することができ、特に多くの項目が書かれたテーブルや広告を読み飛ばす際に役立ちます。この機能は、NVDAでは[,]キーを押すことで、NetReaderでは[z]キーを押すことで実行できます。
そして3つ目が、p要素など、テキスト段落の単位で移動する機能です。この機能は、NVDAの2024年8月時点での最新版である2024.2jpで追加されました。
注意したい点として、今回紹介した機能は、見出し要素間の移動に変わる機能ではありません。見出し要素間の移動が、ページ内のどの場所からも利用できるのに対し、上記の機能は特定の部分や限られた状況でしか利用できません。
また、機能を利用するためには、ページの構造を把握しておく必要がありますし、基礎的とはいえHTMLに関する知識も必要になります。そもそも、この方法が利用できるスクリーンリーダーやブラウザも限られています。
結局のところ、やはりWebページを作成するにあたっては、ページの構造に合わせて見出し要素を設定することが重要になるといえるでしょう。見出し要素間の移動に加えて、今回紹介した機能を活用することで、さらに効率よくWebページが閲覧できるようになります。