WCAG 2.1解説書でリンク切れを見つけてから提出したPull Requestが公開ページに反映されるまでの話
アクセシビリティ・エンジニア 中村(直)アクセシビリティチェックの中で、WCAG2解説書に立ち戻って達成基準の問題に当たるかどうかを判断することが結構な頻度で発生するのですが、アクセシビリティ部に所属するスタッフから、とある箇所の解説書のリンクがおかしいのではというコメントがありました。
実際の箇所としては、WCAG 2.1の達成基準 2.2.1: タイミング調整可能を理解するにある「カルーセル」のリンクです(下記断片はこの記事の執筆時点)。
この達成基準が適用されない制限時間の例としては、繰り返しスクロールするテキスト、キャプション、及び<a href="http://https://www.w3.org/WAI/tutorials/carousels/">カルーセル</a>が含まれる
http://https://
という奇妙な文字列で始まっていることがわかります。WCAG 2.1の翻訳は、原文に日本語訳を流し込む形で作成しており、調べてみると原文に由来するものということがわかりました。そこで、WCAG 2.1解説書の原文であるUnderstanding WCAG 2.1を管理しているGitHubのレポジトリに筆者がPull Request(Fix link in Timing Adjustable #3944)を7月4日に提出しました。
執筆時点で、Understanding WCAG 2のメンテナンスは、WCAG 2.x Backlog Task Forceが中心となって作業されてます。プロセスとしてはメーリングリストでレビュー依頼が出され、レビュー期間が終了すればマージするという手順が踏まれています。
このPull Requestのレビュー依頼メールはREVIEW - WCAG 2 proposed changes (due by July 23)であり、7月23日までがレビュー期間でした。このPull Requestは7月25日にマージされています。
公開ページのUnderstanding SC 2.2.1: Timing Adjustable (Level A)への反映は、8月2日に確認していました(このページのUpdatedの日付は25日になっていますが、GitHubでマージされたものが即日反映されるわけではない、ということになります)。
というような流れで、Pull Requestを提出して、マージされて、公開ページに反映されるまで、おおよそ1カ月かかったことになります。また、簡単なタイポであれば積極的にW3C側で修正対応されることがわかります。
WCAG 2.1解説書の日本語訳で疑問を見つけたら(WCAG 2.2解説書については鋭意翻訳作成中です)、WAICのGitHubレポジトリ、もしくはGoogleフォームから報告してもらえると助かります。もちろん、WAICを経由せず直接W3CにPull Requestを提出するのもよいと思います。我こそはという方はW3CのレポジトリにPull Requestを提出してみてはいかがでしょうか。