WCAG 2.1/2.2/3.0の更新
アクセシビリティ・エンジニア 中村(直)先週12日付けで、WCAG 2.1と2.2、そしてWCAG 3.0が一度に更新されていました。公式のアナウンスはそれぞれ下記になります。
- WCAG 2.1 and WCAG 2.2 published with minor editorial updates
- Updated Drafts for Review: W3C Accessibility Guidelines (WCAG) 3.0
WCAG 2.1と2.2
WCAG 2.1のChange LogとWCAG 2.2のChange Logを見比べると、ほぼ同一の内容となっています(WCAG 2.2の達成基準が増えた分だけ、変更点が多くなっています)。ここではWCAG 2.2の主な変更点を取り上げてみます。
- Glossary(用語集)の修正
- single pointer(シングルポインタ)
- used in an unusual or restricted way(一般的ではない、又は限定された用法で使われている)
- motion animation(モーションアニメーション)
- programmatically determined(プログラムによる解釈)の変更
- Glossaryの体裁の修正。例えばchanges of context(コンテキストの変化)など。
- Abstractで提示されるデバイスの文言の修正
- そのほか見映えや編集的な単語に関する変更
なお、WCAG 2.2は、ISO/IECに受理され、ISO/IEC DIS 40500として現在登録されています。今回のWCAG 2.1と2.2の更新はこのISO/IECの動きに関連するものと個人的に捉えています。
WCAG 3.0
WCAG 3.0については、WCAG 3.0自身だけでなく、Requirements for WCAG 3.0やExplainer for WCAG 3.0も合わせて更新されています。
斜め読みした限りでは、かなり広範に手が入っており、筆者も全容を掴み切れていません。WCAG 3 IntroductionのSummary of changesでは次のように記載されています。
- Explanatory content is moved to the Explainer.
- The term 'outcome' is changed. The current draft has 'guidelines' that are written as user-centered outcomes and 'requirements' that support the guideline.
- Requirements are indicated as 'foundational' or 'supplemental', as described in the Explainer.
- Accessibility support is changed in 3.1.1 Only accessibility-supported ways of using technologies.
特に大きな変更点としては、2つ目と3つ目でしょうか。それぞれ翻訳するとこんなところでしょうか:
- outcome(成果)という用語が変更された。現在の草案には、ユーザー中心の成果として書かれたguideline(ガイドライン)と、そのガイドラインをサポートするrequirements(要件)が含まれている。
- requirementsは、Explainerで説明されているように、foundational(基本)やsupplemental(補足)として示される。
requirementsについては、Explainerの5.2 Requirements and Methodsで、
- Foundational Requirements will be used to test the most basic level of accessibility. This set of requirements will cover a similar, but not identical, set of needs as WCAG 2.2 Level AA.
- Supplemental Requirements will be used for higher levels of conformance.
とあり、Foundational RequirementsがWCAG 2.2レベルAAに相当するような、基本的なレベルになってくるようです。
WCAG 3.0の一部のrequirementはDevelopingのステータスになっているものが見られます。その1つとしてDecorative imageが挙げられますが、Methodsへのリンクが提示されています(Decorative image methods)。また、上位のguidelineであるImage alternativesにはHow to meet Image alternativesへのリンクが提示されています。
前回のWCAG 3.0の更新は今年5月でしたが(2024年のGAADにあわせたWCAG 3.0の更新もご覧ください)、全体構成としては前回から劇的な構成変更が行われたものと認識しています。今後も大幅な変更があるものと考えますが、今回の更新では、思っていたよりも情報が多少整理されたようにも感じました。
WCAG 3.0を作成しているAGWGでは、For your reviewとして前述のImage alternativesを含む3つのguidelineと、Conformanceのセクションについてレビューコメントを募っています。何か意見のある方はWCAG 3のGitHubレポジトリでコメントしてみてはいかがでしょうか。