Bowen Craggsによる企業デジタルコミュニケーションのトレンド2023年版
デジタル部門のマネジャーも、企業のデジタルコミュニケーションの世界で先端を行くことに興味がある人も、これらは考慮すべきトレンドです
(この記事は、 Bowen Craggs社のWebサイト「Our Thinking」において2023年2月13日に公開された記事「Bowen Craggs' Corporate Digital Communications Trends for 2023」の日本語訳です)
企業のデジタルコミュニケーションは、常に進化し続け、新しいトレンドや技術に適応しています。
特に今年、企業はより魅力的でアクセスしやすいコンテンツの表示方法や、ESG(環境、社会、ガバナンス)とデータの透明性がいかに重要か強調することに取り組んでいます。
この記事では、企業のデジタルコミュニケーションにおける今後の重要なトレンドを探り、デジタルコミュニケーションを改善するための革新的な戦略について、見識を提供します。
1.今年は、PDFに閉じ込められた素晴らしいコンテンツを解放する年にしよう
企業が作成する統合レポート・年次報告書やサステナビリティ報告書などには、非常に魅力的なストーリーやインタビュー、導入事例が含まれていますが、PDF形式で作成されることが少なくありません。
そして、残念ながらそうしたコンテンツは、必ず企業サイトに掲載されるわけではないのです。
レポートの要点をHTML形式で新たに処理し直すことは重要です。長いPDFのレポートを読まないような、求職者、個人投資家、金融アナリストやメディア関係者など、より幅広い訪問者たちは、この処理を高く評価するでしょう。
では、PDFレポートのコンテンツをHTML形式で表示するには、どのような方法がベストでしょうか?
また、企業サイトのどこに置くべきでしょうか?
このような問いに対して、Bowen Craggs Index内の3社、 イギリスの製薬会社GSK、イギリスのエネルギー大手bp、スイスのNestléは、クリエイティブに答えています。
2.従業員のストーリーを通じて、企業メッセージを発信しよう
昨年、自社のデジタルチャネルで従業員のエピソードを紹介することで、レベルアップした企業がいくつか見られました。
今年はそのトレンドが、さらに広まると予想しています。
この背景には、コロナ禍後の勤務形態の変化、重要性を増す企業の責任あるメッセージ、深刻化する採用市場があると考えられます。
従業員エピソードの活用は、次のようなコミュニケーションの問題を改善します。
Bowen Craggs Indexの中で、これを巧みに実施しているのは、bpとイギリス保険大手Avivaの2社です。
3. 意義ある計測をしよう
企業のデジタル担当チームは、管理するデジタルチャネルのプレゼンス向上をさらに検討し、データを社内で共有する必要があります。
今後、チームにとって大きな課題となるのは、次の2つ。膨大な量のデータからどのように情報を選別して報告するのかを決めることと、社内で追跡と共有が可能な意義があるKPIを設定することです。
2023年7月にはGoogle Universal Analyticsが廃止され、Google Analytics 4に置き換わります。企業のデジタル担当チームでは、すでにWebサイトの効果計測に取り組んでいることと思いますが、このGoogle Analytics 4への対応は、特にGDPR(EU一般データ保護規則)準拠に関する懸念を考えると、さらなる課題となるでしょう。
Bowen Craggsでは、他のアクセス解析サービスに移行する顧客を認識しており、さらに多くの顧客がそれに続くと予想しています。
Bowen Craggsはこの件により、アナリティクスをどのように利用し、どのようにプライバシーを尊重すれば、ユーザーと企業の双方に利益をもたらすことができるのか、より大きな議論につながることを期待しています。
4. IAを厳しく見直そう
ここ数年間は、視覚的な基準や派手な新技術が大きく飛躍しました。そして、2022年は目立たないながらも革命的な変化がありました。
それは、Bowen Craggs Indexの上位企業の数社が、自社の情報アーキテクチャ(IA)を厳しく見直し、構造とわかりやすさに光明を見いだしたのです。
例えば、Nestlé とGSKの両社は、これまで膨大だった「Sustainability」や「Responsibility」のカテゴリーを含め、企業Webサイトのカテゴリー全体を抜本的に再構築しました。重要な環境問題や社会問題に対して、企業がどのような発言をしているのかを簡単に調べたり、希望する詳細レベルまで掘り下げたりできるように、訪問者のニーズを第一に考えた変革を実施したのです。
最近は、さまざまなステークホルダー、特に若いステークホルダーは、パーソナライズされたと感じられるデジタル体験を求めています。たとえ、実際はパーソナライズされていなかったとしても。それに応えるためには、明確で整理されたIAが欠かせません。
IAの複雑さを正しく理解することは、ファインダビリティ、SEO、デジタルサステナビリティ、そして企業の透明性や誠実さに対する訪問者の認識などに、大きな影響を与えます。
今こそ企業はNestléやGSKのように、IAを改善・強化する好機です。
5. より詳細なESGデータを掲載しよう
もし2021年を、社会的・環境的な公約を発表する企業であふれかえった年とするならば、2022年は、主要な企業が公約をどのように実践しているかを、自社Webサイトで詳細な証拠を紹介した年でした。
2023年は、あらゆる閲覧者層が、より詳しいESGデータを企業に求めるようになるでしょう。そのため、企業のデジタル担当者にはぜひ、新年に作成するToDoリストにESGデータの拡充を加えていただきたいところです。
この分野の「ベストプラクティス」を見たいのであれば、アメリカの小売業者であるTargetのコーポレートサイトをご覧ください。
最近「Sustainability & ESG」カテゴリーを再編成して、ESG目標だけではなく、それを達成するために築いた強固な基盤についても明確に説明しています。
また、Targetの「Diversity, Equity & Inclusion」というコンテンツや、関連データの見せ方は非常に優れています。
さらに、ESGの実績を示すデータは、PDF形式に加えてExcel形式でもダウンロード可能です。
まとめ
2023年、企業のデジタルコミュニケーションは、エキサイティングな展開を迎えようとしています。
ステークホルダーとの信頼関係を構築する従業員ストーリー、有意義なデータ計測、明確な情報アーキテクチャのいずれにおいても、他社に先駆けて維持することが重要です。
また、視聴者はESGに関する公約を、企業がより深く証明することを求めており、それがデジタル担当者の最優先事項となっています。
この領域の継続的な進化に伴い、より親しみやすく、よりエビデンスに基づいたコミュニケーションへの流れが強まり、企業Webサイトは、企業がステークホルダーとつながるための、さらに重要な手段になることが予想されます。