Tom Greenwood氏へのインタビュー
「Sustainable Web Design」の著者であるTom Greenwood氏に、Webサイトの炭素排出量を抑える施策の最新トレンドや、Webプレゼンス向上の始め方などについて、Bowen Craggsに語っていただきました。
(この記事は、 Bowen Craggs社のWebサイト「Our Thinking」において2023年2月28日に公開された記事「In Conversation With: Tom Greenwood」の日本語訳です)
Webサイトの二酸化炭素排出量の多さが注目される中、きっと貴社のWeb担当チームも、自社サイトから排出される二酸化炭素の削減方法を、検討しているのではないでしょうか。
Bowen Craggsは、サステナブルビジネスとデザインの専門家であるTom Greenwood氏に、最新トレンドや正しく取り組んでいる企業、そして、企業Webサイトをより環境に優しいものにするため、まずやるべきことついて話を聞きました。
今後1年間で注目すべき、Web技術による炭素排出量を抑える施策のトレンドは何でしょうか?
Tom Greenwood氏(以下:TG): これからは低エネルギーな、より暗い配色やダークモードを意識したデザインが、トレンドになると思います。もう1つの新たな傾向は、Webサイト上で使用エネルギー量と炭素排出量のデータを、リアルタイムで報告する企業が増加していることです。国から供給される再生可能エネルギーが少ない時間帯には、排出量削減のため、Webサイトのデザインやコンテンツの変更も可能です。
現在、そうした施策を順調に進めている企業や法人と、その理由を教えてください。
TG: 例えば、オランダのIT関連企業Aliter Networksや、環境中心のデザイン・コンサルティング会社Indeed Innovationは、低エネルギーな暗い配色を実装するため、Web上のブランド・アイデンティティを変更しました。これはWebデザインだけではなく、オンライン活動全般の基盤となるブランドデザインに、サステナビリティの考え方を統合した好例だと思います。
現時点での最先端といえるのは、電力需要と再生エネルギーの供給に適応するデザインでしょう。この先駆的な例は、サステナブルで公正なインターネットをテーマにしたオンラインマガジン「branch」です。このサイトのヘッダーには、エネルギー供給とデザインの状況を表示する「Grid Intensity View」があります。
企業のデジタル・コミュニケーション担当者が、自社のWebサイトの炭素効率を高めるために、最初にすべきことは何でしょうか?
TG: Web技術が炭素排出量に影響を与えている状況を、まだ多くの人が認識していません。最初の一歩としては、この問題と潜在的な解決策について、まずはよく知ることをおすすめします。
WebsiteCarbon.com/のようなツールや、私の著書「Sustainable Web Design」を参考にするとよいでしょう。
そして、基本的な認識を持った上で、まずは改善点を1つ選ぶことがおすすめです。すべてを一度に取り組もうとするのではなく、1つのことに集中するのが、ベストなスタートだと思います。
多くのケースで最も簡単かつ効果的な方法は、Webサイト上の画像を見て、どの画像なら削除できるか、どの画像をより小さなファイルとして読み込めるように最適化できるか、を検討することです。そうすることで、Webサイトの読み込み時間が改善され、デザイナー、開発者、マーケティング担当者は、サステナブルなWebサイトの開発プロセスに注力できます。
Bowen Craggsの多くのクライアントにとって、企業Webサイトの炭素効率を考えることは、新しい取り組みとなるはずです。そこで「Carbon Budget」とは何か、問題の定義づけにどう役立つのか、先輩や同僚にうまく伝えるにはどうしたらいいのか、について説明をお願いします。
TG: Webサイトによる気温上昇を何度抑えたいという目標を決めると、温室効果ガスの累積排出量の上限も自然と決まります。そこから今後排出可能な量を算出する方法が「Carbon Budget」です。
Websitecarbon.comやEcograderのようなツールを使えば、Webサイト担当チームは事前に、自社サイトの既存ページや競合他社のページをベンチマークできます。その結果を踏まえて、自分たちの改善目標を設定できます。この目標が、自分たちのWebサイトで許容されるCO2e(二酸化炭素に換算した数値)の最大量、あるいは「予算」となります。
例えば、自社の現在のWebサイトが1ページビューあたり2グラムのCO2を排出し、競合他社のWebサイトが1ページビューあたり1~1.5グラムのCO2を排出していた場合、Web担当者はベスト・プラクティスを示すために、1ページあたり1グラム、またはそれ以下の「予算」を設定したいと考えるかもしれません。このような「予算」は、デザイナーや開発者を、自分たちの決定による影響を分析することに集中させることができます。
また、「Carbon Budget」に代わるものとして、各ページで読み込まれるデータ量の上限を設定する、「Page Weight Budget」という方法があります。
これは純粋な環境指標ではありませんが、「Carbon Budget」と同じような効果が期待できます。さらに、デザイン要素やコードのサイズをキロバイト単位で容易に計算できるようになり、デザイナーや開発者が作業しやすくなります。
※サステイナブル・Webデザインに関する当社の取り組みについては、ミツエーテックラジオの#11「サステナブルWebデザイン」をご覧ください。