金融系企業のWebサイトの改善方法
特徴的なデザイン、わかりやすいラベリングとスムーズな導線、透明性などを採用した、ベストプラクティスを紹介します
(この記事は、 Bowen Craggs社のWebサイト「Our Thinking」において2023年4月6日に公開された記事「Overcoming digital communication mistakes in the financial services industry」の日本語訳です)
金融系企業の公式Webサイトの多くは、訪問者にとって同じようなデザインになっている危険性があります。
不明瞭で時代遅れの配色を選んだり、トップページで同じバナーを使ったり、金融業界に寄せられる批判に対処できていなかったり、といったことが要因です。
ここでは、金融系企業のWebサイトにおける4つの問題と、それらを克服するためのベストプラクティスを、併せてご紹介します。
課題1:似たような配色が多く、思うように個性が打ち出せていない
多くの銀行や保険会社は、洗練されたビジュアルであろうという思いから、業界内で似たような配色を選択しがちです。これこそデジタルコミュニケーションが単調で反復的なものに見えてしまう理由です。
もはや各企業のデジタル資産が、見分けられないところまで来ています。この問題を解決する方法は、より鮮やかな配色を選ぶことです。貴社のWebサイトを際立たせ、覚えてもらうことができます。
もし貴社のブランドカラーなどの都合で、配色を変更できない事情があったとしても、社内のブランドガイドライン担当者と協力して、活気のあるレイアウトや、できる限り異なる色を選ぶようにしましょう。
ベストプラクティス:NatWest Group - 遊び心のある色を組み合わせて、同社のイメージに活気を与えています
イギリスの金融持株会社NatWest Groupが、最近デザインを一新したWebサイトは、パープル、イエロー、ピンクという配色で、新鮮さと楽しい雰囲気をもたらしています。
この選択は、NatWestのブランドカラーであるパープルを強調しつつ、現代的かつ明るい色で補うものです。コンテンツは、年次報告書やCEOメッセージなど、多くの金融系企業と共通するものですが、NatWestのそれはより鮮やかで、親しみやすい印象を与えています。
また、現在はリテールサイトとの一貫性や、ブランドの統一感もあります。
課題2:トップページのコンテンツがほぼ同じで、特長を強調できていない
トップページに年次報告書やCEOの最新メッセージへのリンクを置くことは、重要でやむを得ない場合もあります。しかし、ファーストビューのバナー全体を占める必要があるのかどうかは、再考する時期が来ています。
金融系企業の多くは、トップページに「本決算資料」や「年次報告書」などのバナーを置き、同じようなコンテンツを宣伝していることが少なくありません。そのため、企業独自の興味深いコンテンツは、ページの下方に押しやられています。これは、トップページの貴重なファーストビューを活かして、訪問者に貴社の強みを伝える機会を逃しているといえます。
ベストプラクティス:Goldman Sachs - トップページでポッドキャストをアピールしています
アメリカの金融グループGoldman Sachsは、トップページのファーストビューを活用して、「Goldman Sachs Exchanges」というポッドキャストを訪問者に紹介しています。PDFの報告書よりも、有益で独自性があるマルチメディアを優先することで、訪問者に対して鮮烈な印象を与え、恐らく今まで見たことがない、ポッドキャストに注目させています。
ベストプラクティス: Santander - トップページ画像の革新的な利用で、同社のイメージを向上させています
スペインの銀行大手Santanderが、革新的な画像と見出しを使って打ち出しているサステナビリティのメッセージは、瞬間的なインパクトを与えています。これは、多くの金融系企業がWebサイトで使用しているバナーと、一線を画しています。
トップページには、興味がある閲覧者が見つけられる大きさの、「2022年度年次報告書」へのリンクが貼られています。適切な位置・サイズでリンクを配置していて、ページを圧迫していません。他の銀行のトップページと同じように見えるリスクを回避しています。
課題3: 高度な製品サービスを求める法人顧客向けの、導線がわかりにくい
再保険や複雑な投資商品など、より高度なサービスを求める法人顧客ですが、銀行や保険会社のWebサイトでは軽視されることもあるようです。その傾向は、ナビゲーションが不明瞭だったり、サービスの概要がなかったり、といった事象に現れています。
多くの企業は「Who We Are(私たちは誰か)」カテゴリーに断片的な情報を掲載していて、それが訪問者をマイクロサイトやWebフォームへと誘導することもあります。ただ、このやり方は訪問者にとって、わかりにくく不親切な場合があります。
そのせいで訪問者をいら立たせことはリスクであり、売り上げを失ったり、最も有益な顧客を混乱させたりする危険性もあります。
つまり、潜在顧客となり得るすべての訪問者に向けて、関心がありそうな製品サービスへの適切な道しるべを置くことが重要です。
ベストプラクティス:Zurich - 複雑な保険商品を、整然と表示しています
スイスの保険大手ZurichのWebサイトにある「Menu」ボタンをクリックすると、カテゴリーとサブカテゴリーのリストが、わかりやすく表示されます。「Products and Services (製品とサービス)」の見出しの下には、「Protect your business (ビジネスを守る)」「Protect your employees (従業員を守る)」といった企業に特化したサブカテゴリーなど、さまざまな種類の保険商品が並んでいます。これらのリンクをクリックすると、利用可能なソリューションが表示されます。
このように、商品やサービスを理にかなった形で表示することにより、ユーザーは必要な情報へスムーズにアクセスできます。なお、メニューの上部に、お問い合わせページへのリンクもわかりやすく表示しています。
課題4:よくある批判に、正面から向き合わない
当社が作成したランキングで上位となっている金融系企業でさえ、デジタルコミュニケーションで、化石燃料関連事業への投資やマネーロンダリングに関する議論などの問題と向き合うことに消極的です。
ネットゼロ計画に対する取り組みを計画し、サステナブルな投資へのコミットメントをアピールするものの、いざ論争になると沈黙してしまうのも、典型的なアプローチだといえます。 あるいは、法律主義的な方針のPDFや「statements (声明)」のリストに沿う形で、論争に対処するでしょう。
リスク管理を専門とする業界が、リスクを避けるのは当然かもしれませんが、ステークホルダーや規制当局は、金融系企業が一歩進んだ対応をしてくれることを望んでいます。
ベストプラクティス: 金融系企業以外のWebサイトを参考にします
Bowen Craggs Indexに含まれる金融系企業にとって、論争への対応について世界的に効果的なベストプラクティスが不十分です。
金融系企業は、自分たちが投資先として選ぶであろう、関心が高い社会問題に既に取り組んでいる業界の、企業Webサイトを参考にする必要があります。
例えば、スイスの資源大手Glencoreの「A-Z」コンテンツや、当社Indexの上位企業の事例を参照してください。
金融系企業は、鉱業や石油掘削など、社会的な関心が高い業界に直接関与しているわけではありませんが、ステークホルダーや一般市民は、これらの事業に携わる企業と、事業に融資する企業とのあいだに、大きな違いはないと考えています。
まとめ
ここまで紹介してきた問題は、金融系企業のデジタルコミュニケーションによく見られるものです。しかし、(特に過去や現在の論争について)透明性を確保し、すべての訪問者にとってわかりやすいユーザー導線を設計し、自社を際立たせる魅力的なビジュアルの使用に注力することで、問題を解決できます。