ビジュアル・ストーリーテリング :企業コミュニケーションを信憑性のあるものにするためのカギ
魅力的なオリジナル写真で、企業コミュニケーションを信憑性のあるものにするためのカギ
(この記事は、 Bowen Craggs社のWebサイト「Our Thinking」において2023年5月23日に公開された記事「Visual storytelling」の日本語訳です)
アメリカ合衆国テキサス州オースティンで開催された、テクノロジー・ビジネス・音楽・映画の祭典「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)2023」では、デジタルコミュニケーターを悩ませている多くの疑問が、テーマとして取り上げられました。例えば、「企業は社会問題について、声を上げるべきか? 静観するべきか?」「政治色が強まる状況で、ESG情報を真摯に伝える方法は?」「生成系AIの広範な影響は?」などです。
私たちが参加した、ある講演がこれらの疑問の根底にあるテーマに触れていました。その講演は、ストックフォトプロバイダーPICHAの創設者Josiane Faubert氏と、New York TimesやThe Guardianなどに作品が掲載されているフォトジャーナリストのRita Harper氏による講演、「ビジュアル・ストーリーテリング:コミュニティを高める方法」でした。
その講演のテーマは「信憑性」。そして「なぜ画像を使ってリアルなストーリーを伝えることが重要なのか」でした。
ここでは、企業のコミュニケーション担当者が、ビジュアル・ストーリーテリングの重要性を理解するために、カギとなるポイントを紹介します。
ストーリーを語るときは、一般的ではなく具体的に
企業のWebサイトでは、一般的な画像や、使い古されたストックフォトは使用しないことをお勧めします。これにはいくつかの理由があります。
まず、企業サイトの訪問者は、リアルではないものを見抜くセンサーが非常に敏感です。サステナビリティや採用情報など、特に信頼性が重要なカテゴリーでは、ありきたりな画像を使用することで、企業が発信する重要なメッセージにも、連鎖的に影響が及ぶ可能性があります。
次に、一般的な画像を使用すると、ほかの企業サイトと見分けがつかなくなります。
そして最後に、ストックフォトを使用すると、実際の従業員や仕事現場を紹介する絶好の機会、つまり、自社の本当の姿をステークホルダーにより深く知ってもらうチャンスを逃すことになります。
信憑性のある画像を使うことには、さらに多くのメリットがあります。
Josiane氏とRita氏は講演の中で、「人々の多様な経験を世界中で共有するために、ビジュアルメディアは不可欠であり、画像がストーリーを語り、物語を形作るのです」と述べました。
力強い画像は、個人のアイデンティティや文化、食べ物、衣服、場所などの具体的なディテールを通して、ストーリーを語ります。企業サイトなどで掲載している画像が、本当に人々の心を打つかどうか。それには、このようなディテールがカギとなります。
多様なストーリーを伝えよう
SXSWでJosiane氏とRita氏は、「2020年以降、より多様な写真素材を依頼する企業やブランドが、急激に増加していることに気づいた」と語りました。この傾向は、Black Lives Matter運動に起因すると考えられます。
そして、大企業によるこの試みが、失敗するケースが多いことにも、彼らは気づきました。その理由は、企業が具体的で真実味あふれるストーリーを語るのではなく、狭い視点から「各ステークホルダーが聞きたいだろうと思われるストーリー」を伝えていたからです。
Josiane氏とRita氏によりますと、企業が被写体に敬意を払い、洞察力をもって接する適切なパートナーを持っていないこと。あるいは、どのストーリーを伝えるべきかを決定する際に、委託に適した多様な編集チームを持っていないことが、問題のひとつになっているようです。
画像を依頼するパートナーの多様性が本物であれば、企業のダイバーシティ、イコーリティ(平等性)、インクルージョンという公約への推進をサポートできます。
Rita氏は次のように語りました。「ビジュアル・ストーリーテリングにおける多様性は、マイノリティ・グループを前面に押し出す強力な手段です。そして、そのようなグループに属する人々が、まるで写真家が彼らを見るように、よりリアルに自分たちを見られるようにする強力な手段でもあります」。
Rita氏の作品例はこちら。
信憑性がカギ
企業Webサイトにおけるすべての主張は、可能な限り証拠で裏付けられるべきだと考えています。例えば、ESGに関する記述は、業績データ・ストーリー・ケーススタディなどと相互参照する必要があります。さらに、企業で働くことがどのようなことかを説明するコンテンツは、さまざまな従業員の声でサポートする必要があります。これらと同様に、Webサイト上の画像も、メッセージをサポートし、さらに信憑性を深めるものであるべきです。
具体的にはどうすればよいのでしょうか? まず、画像には、その人物の背景にあるストーリーを説明するキャプションを付けるか、周囲にあるテキストで画像をサポートする必要があります。
これを実践しているベストプラクティスは、イギリスの保険大手Avivaです。AvivaのWebサイトは、強力な人材プロフィールと実際の写真を通じて、社員を紹介しています。
重要なポイントは、画像が演出されたものではなく、自然体のものだということです。
ストックフォトを避け、できるだけオリジナルの写真を使用することをお勧めします。しかし、企業Webサイトでは、ストックフォトが費用対効果の高い選択肢であり、避けられないケースがあることも理解しています。
企業がどうしてもストックフォトを使いたい場合は、実在の人物のストーリーに基づいて、キュレーションされた多様な画像を提供している、PICHAのようなフォトライブラリーを選ぶことをお勧めします。
また、会議室で握手する人々や、ホワイトボードを指さしながらほほ笑む従業員グループなど、ありきたりな画像を選ぶことも避けましょう。
企業サイト全体にオリジナル写真を使用するのが予算的に難しい場合は、アクセス数の多いページや人気のあるページ、影響力のあるページを優先してください。
企業のメッセージをサポートし、信頼関係を構築するだけではなく、付加価値を与え、有益なキャプションを付けた画像は、SEO対策・アクセシビリティ・二酸化炭素排出効率の観点からも優れています。
企業コミュニケーション担当者のための教訓
- 企業サイトの写真を選ぶ際は、その背景にあるストーリーと、そのストーリーを企業サイトで伝える理由に焦点を当てましょう
- 企業サイトの画像を依頼したり選んだりする際は、興味深いストーリーを確実に伝えるために、多様なアドバイザーと協力し、さまざまな意見を求めましょう
- ストックフォトはできるだけ避けましょう。もし、どうしてもストックフォトを使用する場合は、包括的なフォトライブラリーの写真を選び、視覚的にありきたりなコンテンツを避けましょう