デジタル年次報告書の公開における最新ベストプラクティス
特別な編集コンテンツから、CEOの発言をまとめた動画まで。本体の企業サイトと統合するべきかどうかという問題はいったん脇に置き、デジタル年次報告書の革新ともいえる、最良の事例を4つご紹介します。
(この記事は、 Bowen Craggs社のWebサイト「Our Thinking」において2023年9月21日に公開された記事「The latest best practice in presenting digital annual reports」の日本語訳です)
近年、企業はデジタル版の年次報告書について、投資家向けカテゴリーに統合したり、別の特設サイトを構築したりと、ますます多くの時間と費用をかけるケースが増えています。Bowen Craggsでは原則として、相乗効果が期待できることから、可能な限り年次報告書を本体サイトに統合することを勧めています。しかし、本体サイトでは実現できないような、目を引くビジュアルや雑誌のような雰囲気を、別サイトであれば表現できる、というメリットを享受できる企業もあります。この記事では、掲載場所に関わらず、投資家向けに優れたデジタル年次報告書コンテンツにフォーカスします。
以下は、特別な編集コンテンツ、CEOの発言をまとめた動画など、年次報告書を革新する4つの好例です。
bp
イギリスのエネルギー大手bpは、「投資家カテゴリー」と年次報告書を緊密に統合しています。「戦略」「ビジネスモデル」「役員報酬」「主要ダウンロード」の4つのカテゴリーに分け、報告書のメインエリアではインフォグラフィックと抽出した統計データを使って強調しています。すべての情報を集中することで、情報の断片化を抑え、訪問者が読みやすくて理解しやすいようにしています。また、報告書のPDF部分やサイト内にある関連資料への、戦略的なリンクも設置しています。
BASF
ドイツの化学大手BASFは、年次報告書を専用サイトで提示することを選択しました。そして、印象的なビジュアル要素を使用したり、「コーポレートガバナンス」「財務諸表」などのカテゴリーを含めたりしています。雑誌のような雰囲気のトップページで「輝かしい会社概要」を提示し、取締役会長の動画メッセージを含む、印象的なコンテンツを際立たせています。年次報告書の専用サイトにある唯一の欠点は、本体サイトからの分断です。分断により、本体サイトの会社概要にある重要な情報に直接アクセスできません (「コーポレートガバナンス」への明確なリンクはあります)。
Hugo Boss
ドイツのファッション・ブランドHugo Bossは、専用サイトで魅力的な年次報告書を公開しています。そこで新たに「Powerful Stories」というカテゴリーを設けているのですが、これは年次報告書を基にした、コンテンツの革新的な生成方法です。「Powerful Stories」を構成する「Powerful Brands」から「Powerful People」までの4つのサブカテゴリーでは、印象的なループ動画や写真(特に従業員の場合)を用いたストーリーを展開しています。このようにクリエイティブな方法で、さらなるインサイトと関連する年次報告書の「章」へのリンクを提供しています。
P&G
アメリカの日用品大手P&Gの年次報告書はユーザビリティに優れていて、本体サイトの主要なラベルや企業情報は、訪問者がレポートを読みながら参照できるようにしています。特に優れているのは、レポートから重要な統計情報を動的で読みやすい方法で引き出した、インフォグラフィックです。優れたHTML情報と「Our Impact」カテゴリーを照らし合わせることができるため、サステナビリティ・アナリストにとって役立つことでしょう。インフォグラフィックを、PDF から本体サイトに転載するのを怠る企業もある中で、P&Gの洗練されたアプローチは、年次報告書の業績データを最大限に活用しています。