マーケティング・コミュニケーションという太陽系の中で、企業Webサイトはどこに位置するのか?
2024年3月、ベルリンで開催された「Web Performance Summit」で行われた2つのプレゼンテーションがきっかけで、私は企業コミュニケーションとマーケティングとのあいだにある永続的な「フレネミー(友人であり敵でもある)」関係と、宇宙のメタファーについて考えさせられました。
(この記事は、 Bowen Craggs社のWebサイト「Our Thinking」において2024年4月29に公開された記事「Where in the Marketing-Communications Solar System is the Corporate Website?」の日本語訳です)
あるヨーロッパのB2B企業のコミュニケーション担当者は、自らの講演で「私にとって、企業Webサイトは太陽だ」と語りました。多くのコミュニケーション担当者は、このたとえに完全には同意しないかもしれません。しかし、ほとんどの人にとって、そこまで遠く外れてはいないでしょう。おそらく、水星くらいではないでしょうか。
このコミュニケーション担当者にとって、企業Webサイトは企業の現状と、伝統・戦略に関する情報とのあいだに不可欠なハブです。また、第三者が他の場所で報じた事実を確認するときの、信頼できる唯一の情報源です。さらに、他のチャネルやメディアで情報が拡散されたときに、ステークホルダーとのエンゲージメントを高めてくれるようなコンテンツの拠点です。そして、誤情報や噂に対抗するための、主要なチャネルでもあるのです。
これらはBowen Craggsにとって心地よい話ですが、マーケティングの視点では違った見方でとらえています。そのことを私に思い出させてくれたのは、その日の後半に登壇したB2Bマーケターでした。そのマーケターは、バイヤージャーニー(購入者の行動経路)を4つの円で示したインフォグラフィックを披露しました。4つの円は外側から「認知」「検討」、「購入」「ロイヤルティと拡大」と記していて、その間にさまざまなチャネルをプロットしていました。その中で、企業Webサイトは外縁部にプロットしていて、「認知」に属するチャネルの1つでした。それは、オーガニックなソーシャルメディアとともに、中心である太陽から遠く離れた位置にありました。
「デジタル」は、マーケティングにとって絶対的な中心です。しかし、企業Webサイトは、オンライン広告、製品Webサイトのコンテンツ、マーケティング向けのアプリ、メールマーケティング、ウェビナー、カスタマーポータル、オンラインカタログ、eコマースといった、「デジタル・タッチポイント」の1つに過ぎません。なお、重要なオフラインのタッチポイントとしては、展示会、会議、印刷広告、商品・サービスの販売店などが挙げられます。
ここまで、両者の見解は大きく異なっているように思えますが、この2つの講演にはいくつかの共通するテーマもありました。マーケティングとコミュニケーションの視点は、決して同じではないでしょうし、同じであるべきでもありません。ただ、企業・組織で働くすべての人のために、両者が同意できる点がいくつかあるはずです。
デジタルは、マーケティング、販売、コミュニケーションにおいて、最も重要なチャネルであることに同意します。 企業は、これらすべての目標をデジタルチャネルで達成する必要があります。そして、すべてがより統一され、チャネル同士の競合が少なくなるほど、状況はより良くなります。これは、すべてを1つのURLに配置する、という意味に受け取れるかもしれません。しかし、実用的な理由から、企業、ブランド、小売などに特化したコンテンツは、別々にされることがしばしばあります。その場合、すべてが適切にリンクされ、コンテンツが重複していないことを確認する作業が必要です。訪問者と企業のために「デジタル」が連携して機能していることを確認するのは、時間を有効に活用することにつながります。
コンテンツは、マーケティングとコミュニケーションの双方にとって重要ですが、その理由は異なります。 マーケティング部門は、キャンペーンと見込み顧客発掘のためのコンテンツを作成します。一方、コミュニケーション部門は、顧客を含むすべてのステークホルダーとの信頼関係を構築するために、コンテンツを作成します。コミュニケーション部門は、製品やサービスの認知度を高めるような工夫を、制作するコンテンツに含めることはできないでしょうか?対して、マーケティング部門は、研究開発、技術、製品を、より世間の関心を呼ぶように扱うことで、認知段階で信頼を築く方法を検討できないでしょうか?
コミュニケーション部門は、データ、プロセス、収益の観点から、より多くを伝える必要があります。 企業Webサイトが認知度を高める方法を理解することは、ほんの始まりに過ぎません。次のステップは、リードジェネレーションや顧客ロイヤルティといった最終的な目標について、マーケティング部門がどのように考えているかを理解すること。そして、データとエビデンスを用いて、コミュニケーション部門の取り組みが途中のさまざまな段階で、どのように貢献しているかを示すことです。SEOと第三者が発信するメディアの価値は、マーケティング部門の注目を集めるでしょう。さらに、企業Webサイトがこれらの目標にどのように貢献しているかを、金銭的な価値に換算して示すことが重要です。
マーケティング部門は、キャンペーンが会社の状況に適合していることを、確認する必要があります。 マーケティング部門は、キャンペーンが会社の状況に適合していることを、確認する必要があります。マーケティングキャンペーンはクリエイティブであるべきですが、信頼を損なったり、他のデジタルチャネルのストーリーと矛盾していたりしてはいけません。これに関連する点として、有料コンテンツは見込み客のコンバージョンに重点を置いていますが、共有されたり、「いいね!」されたり、口コミで広まったりするオーガニックコンテンツは、キャンペーンと同じくらい強力になる可能性があります。
マーケティング部門とコミュニケーション部門とのあいだには、企業Webサイトに対する認識という点で、太陽と海王星ほど隔たりがあるかもしれません。そのギャップを埋めて、軌道をより密接に一致させるには、合意できる領域に焦点を当てることが重要です。
※ Axel Springer Corporate Solutions社とBowen Craggs社の共同で、2024年3月14日に「第2回Web Performance Summit」を開催しました。