AI時代の企業検索
イギリスのデジタル・エージェンシーExposure Ninjaの創設者で、「How to Get to Top of Google(Googleのトップに立つ方法)」の著者でもある、SEO専門家のTim Cameron-Kitchen氏が、2024年6月に開催したBowen Craggs Clubの定例会で、Googleの新機能「AI Overviews」について説明しました。
(この記事は、 Bowen Craggs社のWebサイト「Our Thinking」において2024年7月2日に公開された記事「Corporate search in the age of AI」の日本語訳です)
アメリカのIT大手Googleが公開した新機能「AI Overviews※」は、現在アメリカ国内でおこなわれた検索の約8%に展開されています。そのほとんどが、漠然とした「ロングテールキーワード」による検索や、「何を・どこで・どのように・なぜ」というタイプの質問への応答に使用されています。
※「AI Overviews」は、検索ワードに対してAIがWeb上の情報をまとめ、自動生成した要約を表示する機能のこと。ユーザーは、検索結果から有益な情報を選び出し、まとめる手間が省けます。
Webサイトへのリンクの提供から、AIによる回答の提供へ
AI Overviewは、検索結果の要約とともに、Tim氏と彼のチームが実際の情報源だと示唆する「裏付けとなるリンク」のセットと、追加で「注目のスニペット(サイトから抜粋された短い説明文)」を提供してくれます。これらは、オーガニック検索の結果ページの上部パネルに表示されます。そして多くの場合、従来のリスティング広告は、ページからはずれます。
この新しいアプローチに企業が対応しない場合、これらの要約は批評家の声を増幅させてしまう恐れがあり、企業にとって風評上の潜在的な問題となる可能性があります。
その他の検索エンジンもGoogleのAI Overviewsと似た動作をするため、Google向けにコンテンツを最適化すれば、例えばBingChatやPerplexityなどにも同じ原則が当てはまるはずです。
普及し始めるのはいつごろ?
Googleの目標は、2024年末までに10億人がAI Overviewsを利用できるようにすることです。ヨーロッパとイギリスは、北米に次ぐ第2波になりそうです。しかし、この機能のプライバシーや著作権、データ保護への影響に対するEUの見解によって、時期は遅れるかもしれないという、未解決の疑問があることをTim氏は指摘しました。
準備のためにできることは?
この機能の浸透に先駆けて企業が取り組むべきこととして、Tim氏は次の基本的な手順をすすめています:
- 自社のサイトが、従来のGoogle検索で、上位にランクされていることを確認します。
- AI Overviewsが容易に再構成して検索結果に表示できるよう、コンテンツを簡潔でわかりやすい文章と段落で構成していることを確認します。
- ユーザーやステークホルダーと同じ言語(トーン、スタイル、語彙を含む)を使います。
これは、「グリーンウォッシング」や「スウェットショップ(搾取工場:劣悪な条件で従業員を働かせる工場)」など、避けたいテーマを扱うことを意味するかもしれません。 しかし、企業サイトがこれらのテーマを直接的かつ適切に対処することにより、AI Overviewで貴社のメッセージが批評家の声に埋もれてしまう可能性を大きく減らせます。
また、Tim氏は次のことも推奨しています:
- アメリカを拠点としていない場合、VPNを使用して、アメリカでどのような検索結果が表示されるかテストしてください。このテストを禁止する規則はありません。
- アメリカのVPNをオンにした状態で(繰り返しますが、アメリカに拠点を置いていないことが前提です)、Googleにアクセスして「Search Labs」と入力します。これにより、Googleの「Search Labs」に登録できるようになり、まだテスト段階ではありますが、先進的な機能にアクセスできるようになります。注:個人アカウントが必要になる場合があります。
最後に、「権威性(情報源としての確かさ)」は、Googleランキングの重要な要素です。 そして、企業のデジタル資産、特にコーポレートサイトは、自社について最も信頼できる情報源です、それを積極的に活用すべきです。