企業の情報発信に創造性を
企業の情報を発信する広報活動には、創造性と洗練された手腕が求められます。訪問者を引きつける創造性、そしてテーマを見つけ出し、社内政治をうまく切り抜け、厳しい予算内に収める手腕です。それがうまくできれば、企業の価値観、使命、活動に命を吹き込む貴重な機会となります。
(この記事は、 Bowen Craggs社のWebサイト「Our Thinking」において2024年8月13日に公開された記事「Creative Corporate Storytelling」の日本語訳です)
さまざまな訪問者の心に響くコンテンツを作り出すことは、容易ではありません。デジタル情報発信に長けた企業は、以下の点に重点を置いています。
- 何よりも大切なことは、的確なテーマ、優れた文章、洗練されたデザインを通じて、編集者も引きつけられるような質の高いコンテンツを作ること
- 日付、執筆者名、そして可能な限りSNSのプロフィールへのリンクを明記することで、証拠・正確性・透明性を提供すること
- 自社の活動が現実世界に与える影響を示すこと
- ステークホルダーのあらゆる関心事に配慮すること
- WebサイトやSNSを含む、すべてのデジタルプラットフォームで、トーン&マナーの一貫性を確保すること
- 幅広い最新のデジタルメディアのトレンドを常に把握し、必要に応じてそれを採用すること
巧みに練られ、一貫性があるコンテンツは、企業とそのWebサイトに独自性をもたらすだけではなく、訪問者とのより強固な関係と、高いエンゲージメントを築きます。Bowen Craggsの訪問者調査によると、オンラインで公開している情報発信カテゴリーへのアクセスは、ブランド認知度の向上と、ネットプロモータースコア(顧客ロイヤルティ・継続利用意向を測る指標)の上昇に、正の相関関係があることが示されています。
Rocheの魅力的なイラスト
スイスの大手ヘルスケア企業Rocheは、まるで雑誌「The New Yorker」のような、ユニークなイラストで読者を魅了しています。Bowen Craggsの「Corporate Digital Communications Index」にある、企業の情報発信に関するカテゴリーで、トップクラスの評価を獲得しているRocheは、ストックフォトの代わりにオリジナルのアートワークを使用しています。レンズでは捉えきれないスタイルやデザイン要素を通じて、企業の個性や価値観を表現しています。

Rocheの創造的なイラストの活用例
Visaの簡潔で的確なSNSでの情報発信
限られた文字数で情報を発信するのは難しいものです。しかし、アメリカの金融大手Visaは、その問題を創意工夫で克服しています。Visaは、X(旧Twitter)の一元化した企業アカウントに加えて、多様なステークホルダーに合わせた複数のアカウントを運営しています。つながりを重視するSNSで、Visaは価値観を強調した短い情報発信を活用して、ユーザーとのエンゲージメントを向上させています。

ユーザーの反応や参加を促すVisaの投稿例
「The New York Times」から学ぶ
メディア業界に目を向けると、アメリカの高級日刊新聞The New York Timesは、その独創的なグラフィックやデータに基づいた記事で、デジタル分野の先駆者となっています。こうしたコンテンツの制作には、企業のデジタル担当者には手が届かないようなリソースが必要になる場合があります。しかし、新たなアイデアを喚起し、ベンチマークとなるでしょう。企業のWebやSNSでの情報発信が、この優れたレベルに近づけば近づくほど、より良い結果が得られるはずです。

The New York Timesの卓越したデータに基づいた情報発信と、視覚的なインスピレーションの例
UPSは価値観と従業員にスポットを当てる
物流大手UPSは、会社が最も大切にしている価値観をテーマにしたコンテンツを数多く制作し、そこで働く従業員たちを積極的に紹介しています。この方法により、UPSが伝えたいメッセージが、コミュニケーション担当者の創作ではなく、実際に働く従業員の声に基づいたものになるよう工夫しています。

UPSが大切にしている価値観と、そこで働く人々を身近に感じさせるコンテンツ
Avivaは、心を揺さぶるような従業員たちの物語を探している
イギリスの保険会社Avivaは、保険業界の常識にとらわれない着眼点で、コンテンツを制作しています。「Who Remembers the Forgetters? (忘れてしまった人を覚えているのは誰か?)」といった大胆な見出しは、新鮮で記憶に残りやすく、訪問者の共感を呼びます。

Avivaが、訪問者の興味を引くために、効果的に使っている魅力的なコンテンツタイトル
Rio Tintoの先駆的なページデザイン
イギリスの鉱業・金属業大手Rio Tintoは、訪問者を引き込むようなページデザインを追求しています。ページ内の文章・写真・キャプションを効果的に配置し、訪問者の興味を引き、最後まで読み進めてもらえるように工夫しています。

Rio Tintoの斬新なページ構造とフォーマットによる、訪問者を飽きさせない工夫の一例
Hydroの解説コンテンツ
ノルウェーのアルミニウム製造大手Hydroは、「アルミニウムはどのように作られるのか」をわかりやすく解説するコンテンツを掲載し、あたかも工場を見学しているかのような没入感を、訪問者に与えています。訪問者はこのコンテンツを読むことで、Hydroの事業について新しい知識を得ることができます。こうした実用的な疑問に対して、事実に基づいて解説するコンテンツは、昨今のトレンドにも合致していて、検索エンジンでも上位表示される可能性が高いです。

Hydroの、訪問者を魅了する、わかりやすい解説コンテンツ
GSKは魅力的な情報発信で、企業の価値観を広く伝える
イギリスの製薬大手GSKは、そのコンテンツの品質と関連性の高さから、Bowen Craggsの「Corporate Digital Communications Index」において、長年にわたって上位にランクインしています。中でも、オンラインマガジン「Behind the Science」は、記事の完成度が非常に高く、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)や、その他の社会課題に対する、GSKの真摯な姿勢がうかがえます。

GSKは、同社の戦略やDEIに対する取り組みを、巧みに発信している