CSS Writing Modes Level 3が事実上の策定完了
アクセシビリティ・エンジニア 中村(直)先月のTPAC 2019参加報告でも触れていましたが、CSS Writing Modes Level 3仕様がProposed Recommendation(勧告案)になったことが先週にW3Cからアナウンスされました(Call for Review: CSS Writing Modes Level 3 is a W3C Proposed Recommendation | W3C News)。早ければ年内にはW3C Recommendation(勧告)として策定が完了することになります。
CSS Writing Modes Level 3は、2014年にCandidate Recommendation(勧告候補)にこそなっていましたが、2015年時点でのCSSを定義するCSS Snapshot 2015(CSS Snapshot 2015 参考日本語訳)にはWriting Modesは見当たらず、後続のCSS Snapshotにあたる、2018年時点でのCSSを定義するCSS Snapshot 2018(CSS Snapshot 2018 参考日本語訳)になってWriting Modesがリストアップされていることが見てとれます。つまり、2015年と2018年時点で比較して、同じCandidate Recommendationのステータスではあったものの、仕様としての成熟度合いは全く別物であった、ということが言えます。
その仕様の成熟度合いについて、特にCSS仕様を策定しているCSS Working Groupではどのように捉えられているのかについては、CSS Writing Modes Level 3のEditorである、fantasaiことElika J. Etemad氏がfantasai 51: CSS WG -- Spec Processでまとめています。もっとも、2011年に書かれた記事ですので、現在のW3Cの勧告プロセスではCandidate Recommendationと統合されたLast Call Working Draft(最終作業草案)というステータスも含まれていますが、考え方そのものは変わっていません。Candidate Recommendationになったからと言って、実装やテストが必要であるために、すぐにProposed Recommendationになるわけではないことがわかるかと思います。
CSS Writing Modes Level 3は、縦書きを定義するCSS仕様であることをご存じの方もおられると思います。実際そのとおりwriting-mode
プロパティを用いて文章を縦書きにすることができるわけですが、それだけでなく書字方向として(この記事がそうであるように)典型的な日本語のように左横書きか、アラビア語のような右横書きかを指定できるdirection
プロパティも定義されています。direction
プロパティ自体はCSS 2.1の9.10節(CSS 2.1 参考日本語訳)で定義されているプロパティですので、横書きの書字方向についてはCSS 2.1の定義をCSS Writing Modes Level 3で上書きしていることになります。(もっとも、横書きについてWeb制作者はHTMLで制御するのが一般的ではあります。)
少し話が脇道にそれましたが、縦書きWeb普及委員会では縦書きに関する技術的な解説や事例が紹介されています。普段目にするWebサイトで縦書きを用いたサイトに遭遇する機会は少ないのが実情ですが、これを機にWeb上での縦書き表現に目を向けてみてはいかがでしょうか。