WHATWGとW3Cとの間の覚書の更新について
アクセシビリティ・エンジニア 中村(直)WHATWGとW3Cとの間の覚書(Memorandum of Understanding Between W3C and WHATWG)が結ばれたのが2年前の2019年のことでした。これによってDOM仕様とHTML仕様がWHATWGが発行する仕様に一本化されることになったわけですが、今年9月から有効となるW3CのHTML Working Groupの憲章案(PROPOSED HTML Working Group Charter)によれば、W3C/WHATWG Relationship updateという、覚書の更新が今年6月に行われていたようです。
この覚書の更新を斜め読みしますと、概ね次のことが追加でなされるようです。
以下の仕様はWHATWG仕様か、WHATWG仕様の一部として公開されます。開発形態はHTML仕様やDOM仕様と類似のものになると思われます。
W3CとWHATWGのコラボレーションの範囲については、HTML仕様およびDOM仕様だけでなく、以下の仕様にも適用範囲を拡大するとのこと。
個人的な感想としては、Web IDL仕様の開発体制が整えられるというのが大きいのではと思います。Web IDL仕様はDOMインターフェースで定義される属性である、IDL属性の「IDL」を定義するものです(MDNのIDL (インタフェース記述言語)も参照)。ものすごく大雑把に言ってしまえば、HTMLとJavaScriptを結びつけるのがWeb IDLなわけですが、Editor's Draftはhttps://heycam.github.io/webidl/という個人のGitHubのレポジトリーになぜか置かれている状況です(筆者の理解の不足でなぜそういう状況なのかまでは把握できていませんが)。これが相応な場所で開発、公開されるというのが今回の覚書の更新で最も大きなトピックではないかと思っています。
また、W3CとWHATWGのコラボレーション範囲として「HTML仕様およびDOM仕様から分割された仕様」という文言が入っているのも見逃せないところです。具体的なところまではわかりませんが、例えばHTML仕様の一部が切り離されて、HTML仕様が小さくなる可能性もあり、両仕様が再編される可能性があるとも読み取れます。いずれにせよ、最新の仕様がどこに存在しているのかはおさえておきたいところです。