Google翻訳の10年
(この記事は、2016年6月7日に公開された記事「Google Translate: Ten Years Later」の日本語訳です。)
私はGoogle翻訳が公開された当時を覚えています。それが10年前だなんて、信じがたいことです。
統計的機械翻訳(SMT:Statistical Machine Translation)の名で知られるその技術は全てを変えてしまうだろう、私は当時そう考えていました。
翻訳コミュニティの大半が、当初はGoogle翻訳に対し否定的でした。何人かは、それが過渡期にあると見ていました。機械翻訳が単に目新しいものより遥かに価値あるものになると予期していた人はごく少数でした。
私は、それが単に目新しいものとは考えていませんでした。2007年に書いたように、技術者たちがが翻訳業界を引き継いでいくだろうと信じていました。
SMTが翻訳業界を崩壊させることははありません。しかし、(翻訳自動化ユーザー協会に代わり)アーリーアダプターな顧客と共に、SMTとGoogleの取り組みは、翻訳業界を想像すらできないほど変えることになるでしょう。
以下に示すのは、2006年当時のGoogle翻訳の画面キャプチャです。中国語、日本語、韓国語やアラビア語がまだベータ版として扱われています。
言語数はその後、一年につき約10言語の勢いで増加しました。
そして以下の画面キャプチャは、現在のGoogle翻訳です。
Google翻訳はこれまで数々の印象的な成果をあげています:
- 103言語のサポート
- 1日につき1,000億語の翻訳
- 世界中に5億人のユーザー
- 最もよく利用されているのは英語、スペイン語、アラビア語、ロシア語、ポルトガル語、インドネシア語の中からの組み合わせ
- ブラジル人が世界で最もGoogle翻訳のヘビーユーザー
- 翻訳コミュニティを通じ、350万人が9,000万に及ぶ改善に貢献
Google翻訳の成功は、全く何も翻訳が提供されないよりかは、たとえ高品質でなくとも機械翻訳を快く受け入れることをあらわしています。
誤解のないよう言っておきますと、私は機械翻訳にばかり頼っている企業を支持しているわけではありません。機械翻訳は、誰かに何かを買ってもらおうという段になると、実用的でなくなります。せいぜい、プロの翻訳家の仕事がいかに価値あるものかを知らしめる程度です。
しかし、いかにプロの翻訳家といえど、1日につき1,000億もの単語を訳すことはできません。
多くの大企業が今や機械翻訳を利用しており、中には一ヶ月あたりで数十億に及ぶ単語を翻訳している企業もあります。
IntelやMicrosoft、Autodesk、Adobeといった企業は、消費者向けに機械翻訳エンジンを提供しています。多くの企業が後に続くものと思われます。
Googleの言語や機械翻訳に対する投資は一貫して、同社のサイトがWebグローバリゼーション・レポートカードで一位に選ばれる要因でありました。
Google翻訳は、翻訳を「一般の人々に」もたらしました。それは言語の持つ可能性を引き上げ、世界中でコミュニケーションの風通しを良くしてきました。
これからの10年が楽しみです。