ディグローバリゼーションがグローバリゼーションを妨げない理由
(この記事は、2020年4月22日に公開された記事「Why deglobalization will not dampen web globalization」の日本語訳です。)
2月に2020年版Webグローバリゼーション・レポートカードを発行した時点で、新型コロナウイルスのグローバル化が進行していました。以来、そのウイルスがグローバリゼーションを後退させるのではないかと話題になっています。
現在、「ディグローバリゼーション」という言葉が流行しています。しかし、その意味するところは人それぞれ。ある人にとって「ディグローバリゼーション」とは、供給や製造を一国のみに依存している状況を脱することです。Bloombergに掲載された記事は、以下のように指摘しています:
中国はグローバリゼーション最大の勝者であり、そしてもちろん、ディグローバリゼーション最大の敗者となるでしょう。シンガポールにある米国商工会議所の調査では、調査したうち28%が中国への依存度を下げるべく、代替のサプライチェーンを構築または利用していると答えています。
そして別の記事は、世界中でナショナリズムが(継続的に)台頭する可能性を示唆しています:
驚きに値しませんが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は既に、ナショナリストが口にする台詞に組み込まれています。一部のアメリカ人にとって、この病気が中国に由来するのは、中国という国が世界に危険をもたらし、責任ある行動を期待できないとする信念を再確認させるだけです。同時に多くの中国人は、アメリカのウイルス対策の一部が人種的に動機づけられたものであり、中国の台頭を阻止するのが目的と見なすでしょう。米中央情報局(CIA)がウイルスを作成したとする陰謀論は、既に出回っています。誤った情報の氾濫する世界において、COVID-19がさらに多くのデマをもたらすのは、間違いありません。
オランダの歴史家、Johan Huizingaの示した通り、ヨーロッパでペストが流行した後しばらくは、「中世の衰退」と形容するにふさわしい時代でした。彼にとっての現実は、単に感染症のもたらした経済的な後遺症にとどまらず、最終的には普遍主義文化に終止符を打つ神秘主義、非合理主義、外国人恐怖症でした。同様に、COVID-19が「グローバリゼーションの衰退」を引き起こす可能性は、十分にあります。
確かに、トランプ大統領の最近の移民受け入れ「一時停止」は、外国人恐怖症が醜い頭をもたげている一つの兆候といえます。しかし彼は、世界貿易や移民受け入れを阻むためにコロナウイルスを必要としていませんでした。彼は当選した瞬間から、そうした行動を起こしています。
ディグローバリゼーションとは、グローバリゼーションの実際と、それに関して認識された危険性に対する反応です。
企業は、中国が6週間に亘り経済を停止させたことで直面した課題を回避すべく、複数の供給チャネルを持つべきでしょう。私は、ディグローバリゼーションがグローバリゼーションの終焉を予感させるとは考えていません。新たな供給チャネルの開発に伴い、企業は商品やサービスを販売するための新たな市場を発見することでしょう。
グローバリゼーションは例えるなら、とっくの昔にランプから飛び出した魔神のような存在であって、Webのグローバリゼーションも同様です。
昨今では、楽観主義が不足しています。ディグローバリゼーションには暗く陰鬱な印象がありますが、Webのグローバリゼーションは成長、楽観主義、投資がすべてです。
そして、この1カ月のあいだ家に閉じこもっていた経験に基づくなら、Webのグローバル化は依然として健在です。今年に入って、地理的にも言語的にもグローバルに事業を拡大している企業を、私は数多く知っています。
実店舗でしか販売を行ってこなかった企業が、よりバーチャルな存在となる方法を模索しているのを、アメリカ国内だけでなく海外にも観測しています。グローバルに分散したチームを活用することへの評価は高まっています。そして、この地球上で私たちが相互につながっていることへの理解が深まったり、困難に直面している人々への共感が高まっている様が、私には見てとれます。
実際、あまりに多くの人々が苦しんでいます。何千もの独立系レストランが倒産に追い込まれようとしているのに、Facebookのようなバーチャル企業がこれっぽっちも影響を受けないのは、フェアではありません。私は観光業を中心に成り立っている小さな町に住んでおり、この先、困難な道のりが待ち受けています。
しかし、観光客は戻ってくるはずです。人々は再び旅行に出向き、劇場へ足を運び、外食をするでしょう。私たちはこの状況を乗り切らなければなりませんし、そうするでしょう。
未来を見通せば、Webのグローバリゼーションは以前より強力なものとなりつつあります。それは組織の拡大に役立つだけでなく、組織が世界をよりよく理解し、また世界が組織をよりよく理解するのに役立ちます。私は楽観的であり続けていますが、読者の皆さんもそうであることを願っています。