ロシアとウクライナ:2つの言語 ー 一方は上昇し他方は下降
(この記事は、2022年3月19日に公開された記事「Russia & Ukraine: A tale of two languages - one rising and one falling」の日本語訳です。)
グローバル展開を志向する企業にとって、長いあいだロシア語は「サポートが必須の言語」とされてきました。
昨今の情勢を踏まえると、もはやそうは言えません。
プーチン氏がウクライナ侵攻を決定するより前から、グローバルWebサイトにおいてロシア語の支持率はわずかながら低下していました。
その一方で、ウクライナ語のサポートは着実に増加しています。
私は20年近く前から大手グローバルブランドがサポートする言語を追跡調査していますが、以下に示すように、ロシア語もウクライナ語も、過去15年間でサポートが2倍以上に増えています。今や、8割のグローバルサイトがロシア語を、また調査したサイトの半数がウクライナ語をサポートしているのです。
ロシア語とウクライナ語は、キリル文字という共通の文字を使用していますが、文字の組み合わせが異なるため、言語としてはかなり異なっています。
グローバルブランドが、世界で最も人気のある言語の1つであるロシア語のサポートを打ち切ることは、めったにありません。しかし、過去数年のあいだでは、Delta AirlinesとHermèsがロシア語のサポートを止めています。
明確にしておきますと、上記は直近の数カ月の状況を反映したものではありません。最近では、Amazonがロシア語のサポートを追加しています。またApple、Netflix、Spotifyは、この1年でウクライナ語のサポートを追加しています。
行動は言葉よりも雄弁なものです。そして、インターネット上でグローバルに展開する文脈において、翻訳とは行動そのものです。サポート言語は、企業がどの市場で成功を望むかを反映します。
ここ数年、ロシアが経済的に停滞するなか、ウクライナはヨーロッパで大きな成功例の1つとなっています。ロシアにはウクライナの3倍以上の国民がいることを踏まえれば、ウクライナの言語的台頭がより顕著になっていることは注目に値します。
今回の侵攻は、領土欲と同じくらい、羨望に駆られてのことかもしれません。
文字的には非常に近しい関係にある両言語が、今や戦争と密接に関係していることは、とても悲しいことです。