その1文字をけずりだせ
エグゼクティブエディター 上原ブランドコミュニケーション部に籍を置きつつ、ミツエーリンクスが提供する編集ライティング系のサービスマスターを務めている、上原です。広報Blog「MITSUE COLORS」の開始に際して、まずは自分の業務寄りの視点で、文章の読みやすさを追求するために必要な、心がけについてお話ししたいと思います。
私は駅伝が好きで、よくテレビ観戦をします。数人ずつのランナーがたすきをつなぎ、遠くのゴールを目指すのですが、最終的にたった数秒の差で順位が変わってしまうことも。そんな駅伝を通じて知ったのが、あるチームのスローガン「その1秒をけずりだせ」という言葉です。チームのために、勝利のために、1人ひとりがもう少し、気力を振り絞ろう、努力をしよう、という思いが込められています。良い言葉ですよね。
私は文章にも、この姿勢を活かすべきだと考えています。
ユーザーは、より短時間で読めるほうがうれしい
ミツエーリンクスはこれまで、Webサイトの表示高速化の重要性を、コンマ数秒の差が、大きなコンバージョンの差になることを、訴え続けてきました。ユーザーはどんなときも、できるだけ速くページが見たいはず。ただ、ページを速く表示した「その先」でも、ユーザーの評価は続いているのです。
Webサイトを閲覧しに来たユーザーは、できるだけ速く結論が知りたい、その結論を受けて、できるだけ速く決断したい、と考えます。そんなとき、冗長なまどろっこしい文章が置いてあったら、どうでしょうか。読むのを止めて他のサイトに移動してしまうかもしれません。せっかく表示スピードを高速化しても、コンバージョンという望む結果につながらない可能性もあるのです。
「いやいや、われわれは結論の先出しなど、読みやすいページ構成をしっかりと考えているから、大丈夫だよ」と思われた皆さま、少しお待ちください。
今やWebサイトのノウハウは幅広く共有され、誰もがしっかりと構成を考えてページを作っています。全体的にレベルが上がり、ライバルとの差がつけにくくなって......という、まさに近年の駅伝と同じような状況です。このような状況では、ほんのわずかな部分への気配り・こだわり・努力が、大きな差になって現れます。
少しでも文字数を減らし、理解の高速化をたすける
では、どうすれば良いのでしょうか。端的に言えば、文章も、ユーザーができるだけ速く読み終えられるようにすれば良いのです。方法はいくつか考えられますが、一番簡単な方法は文字数の削減でしょう。掲載する文字数を減らせば、それだけユーザーの読む時間は短くなります。
例えば、「おこなう」「することができる」などの言葉は、直前の動詞に吸収できます。
- 迅速なサポートをおこないます → 迅速にサポートします
- 作業時間を軽減することが可能です → 作業時間を軽減できます
ほかにも意図が重複している言葉、過剰な修飾語なども、削除対象です。全体で10文字減らすだけでも、数秒の差がつきます。表示高速化の実績と照らし合わせれば、この数秒もきっと、大きな差になって現れるはずです。
「その1文字をけずりだせ」
これは、プレスリリースや提案書、日々やり取りするメールやSNSにも同じことが言えます。どのようなメディアに載せる文章も、短くて的確なほうが良いはずです。言葉の正誤や表記揺れを見直すのと同じように、少しでも短い時間で読んでもらえるように、1文字でもけずれる部分を探すことが文章を洗練させる近道だと、私は考えています。