メッセージのサビは、どこに置く?
エグゼクティブエディター 上原日々、文章の読みやすさを追求している、上原です。みなさんは、以前に多くのメディアやSNSが「近年の音楽シーンでは、イントロが短くないと売れない」という話題を取り上げていたのをご存じですか? ポピュラーミュージックのそれが、ここ30~40年で平均20秒から平均5秒になったというデータを紹介し、それはサブスクリプションの音楽配信サービスの影響だ、だから「イントロは短く」という仮説と結論込みで拡散されたのです。
しかし、この話題の基になったアメリカのある大学院生の研究では、歌が入るまでの時間の短縮傾向と、楽曲の人気に相関関係はないと述べられています。また、データを見ますと、サブスクのない30~40年前から徐々に、歌が入るまでの平均時間が短くなっています。研究でもサブスクへの適応は言及されていますが、あくまで要因の1つ。この話題を紹介する記事は、正確性に欠ける結論も含まれていますので、注意が必要です。
さて、前置きが長くなりましたが、この話題の中で「30~40年で楽曲の歌が入るまでの時間が、平均20秒から平均5秒になった」という事実に着目したいと思います。
それこそ30~40年前は、テレビやラジオのチャンネルを変更するのに手間がかかりましたが、今は簡単な操作で好みのコンテンツを探せます。探しやすくなったからこそ、自分が知らない/不要なものに費やす時間はムダ、好きなコンテンツだけを味わっていたいと、楽しみ方が変化したといえるでしょう。
こうなると、コンテンツの作り手側にも適応が求められます。つまり、ユーザーのザッピングに合わせて「全体像が、できるだけ速くつかめるような工夫」が必要になる、というわけです。
新聞文章を参考に、結論は冒頭で伝える
私のセミナーでも紹介することが多いのですが、ユーザーが「目の前のWebページが、自分にとって要か不要かを判断するスピード」はとても速いです。少し前まで「3秒ルール」という言葉もありましたが、今はもっと速くなっているに違いありません。
ユーザーに素通りされず、ちゃんと自社ページを見つけてもらい、読んでもらうためには、どうすれば良いでしょう? まずできることといえば、ページ構成を「結論ファースト」にすることです。これは、すでによく知られたTipsであり、あまたの指南書が、Webページはまず結論から書くと良い、と勧奨しています。しかし、本当に遂行できている企業Webページは、まだまだ少ないというのが実情です。
「結論ファースト」のページ構成とは、具体的にいえば新聞文章のような形式です。主見出し・袖見出しで全体における結論を伝え、次のリード文で記事全体の要約を紹介し、さらに詳しく知りたいユーザーだけ本文を読んでもらいます。新聞は長年、ユーザーの読み飛ばしと向き合ってきたメディアですから、この構成は理にかなっています。読み慣れている人は多いものの、書き慣れている人は少ないため、初めは実践が難しいかも知れません。
少し手間は増えますが、付箋紙を活用する方法がおすすめです。ページ内に書かないといけない内容を、たくさんの付箋紙に書き出して、それを並べ替えながら構成を考えると、頭の中を整理できますし、情報の抜け漏れを防ぐことができます。
結論は、ユーザーの検索意図を踏まえて、ユーザーにとって価値がある・うれしい・印象的な内容を含めると、より効果的です。
ユーザーが知りたい内容を、なるべく早めに見てもらう
では、ページTOPのコピーやメールタイトルなど、短文の場合はどうでしょうか。
ユーザービリティーの第一人者、ヤコブ・ニールセン博士が提唱する法則をご紹介します。Webページを見るユーザーの視線を追いかけたとき、ユーザーの視線はFの字のような形になるといわれています。
下図のサーモグラフは「アイトラッキング分析」サービス紹介ページに掲載されている、Webページを見るユーザーの視線を記録した図です。
まず大きな見出しを水平に読み、次に縦に視線を動かし、見出しがある場所で再び水平移動しました。この軌跡を見ると、おおむねFの字になっているのが、わかると思います。
これを踏まえると、短文においても「大事なことは、早めに書くべき」です。大事なこととは、ユーザーにとってのメリット。この先も文章を読もうと、ユーザーの意欲を刺激するため、先にメリットを見せていきましょう。
例えば、お店がセール開催を知らせる文章の場合。
(例)
毎年恒例・冬の大感謝祭、12月9日(金)スタート!
店内の商品はすべて、通常の8割引きでご提供!
お店からすると、セールを開催すること自体がメッセージかもしれませんが、ユーザーからすれば「どのくらい安いか」「いつから始まるのか」が価値ある情報になります。それを踏まえて文章を調整します。
(例)
通常の8割引き! 店内の全商品が対象
12月9日(金)から 冬の大感謝祭スタート!
このように作る側が伝えたい内容ではなく、ユーザーが知りたい内容を優先して伝えることが重要だと思います。
本記事では、メッセージの核となる部分、音楽でいうサビの部分は、どこに置くべきかを長々と述べてきました。ページの性質にもよると思いますが、やはりサビは早いタイミングでユーザーに見てもらうのが良さそうです。ぜひ参考にしていただき、ヒットを飛ばしていただければ幸いです。