過積載はダメ。そう、文章もね。
エグゼクティブエディター 上原日々、文章の読みやすさを追求している、上原です。世界のおもしろい動画を集めて紹介するテレビ番組は、近年どの局でも放映しています。それだけ人気があるのでしょう。私は笑えるハプニング系動画と、かわいい動物系の動画を目当てに、ついチャンネルを合わせてしまいます。
その番組でよく出てくるのが、明らかに最大積載量を超えた荷物を積んだトラックが、カーブを曲がれなかったり、坂道を上れなかったりする動画です。あくまで動画ですし(巧妙なCGかもしれない?)、テロップやナレーションのおかげで笑える仕上がりになっていますが......。実際にそんなトラックが近くを走っていたら、怖くてしかたないですよね。
過積載は車体の横転や荷崩れの危険が高まるほか、道路に損傷を与えたり、騒音や震動を起こしたりといった害を及ぼすことから、新交通三悪に定められているそうです。警察や国土交通省、高速道路の管理会社も取り締まりを強化していますし、過積載のなくなる日が早く来ることを願っています。
情報を載せ過ぎた文章は、誤配・不達の危険が
このことは、文章でも同じです(展開がムリヤリ......)。1つの文章に、適正量よりも多くの情報を載せてしまうと、誤解を生んだり読むのを途中で止めてしまったり、読み手にとって「わかりにくい」という害を及ぼします。書き手側としても、伝えたいことを伝えられないのですから、Win-WinならぬLose-Loseとなってしまうでしょう。
誰もが情報の過積載は良くないと何となくわかっているものの、自分の胸の内を一気にテキスト化しようとすると、つい1つの文章への載せ過ぎが起きてしまいがち。例えば、このような文章です。
当社のWebサイトは、5年前にリニューアルしたのですが、当時は各部門の意見を尊重したため、事業・サービスごとに独立した構造になってしまい、ユーザーの回遊性が見込めない状態になっている上、時間の経過とともにユーザービリティ・アクセシビリティの面でも問題が顕在化していることから、2023年に当社は創業50年の節目を迎えるにあたり、もっとお客様に愛されるためのWebサイトを実現するため、Webサイトをリニューアルすることにしました。
言いたいことは伝わるのですが、キーとなる情報がスッと入ってこない。脳内で情報の因果関係をまとめようとしているうちに、次の情報がすぐに来るため、処理しきれない情報が出てくるわけです。私の脳内ワーキングメモリーも年齢とともに劣化が進んでいるため、近年めっきり、こういう文章が苦手になってきました......。
1つの文章に載せる情報を、1つに絞ってみる
では、どうすれば良いのでしょうか。脳内で情報の因果関係をまとめやすくするためには、「1つの文章の中に書くのは、1つの情報のみ」というルールを徹底するだけ。ライティングの指南本でも必ず解説されている「一文一義」というルールです。例文を「一文一義」で書き直すと、次のようになります。
当社のWebサイトは、5年前にリニューアルしました。当時は各部門の意見を尊重したため、事業・サービスごとに独立した構造になってしまいました。おかげで、ユーザーの回遊性が見込めない状態になっています。また、時間の経過とともにユーザービリティ・アクセシビリティの面でも問題が顕在化してきました。2023年に当社は創業50年の節目を迎えます。これを機に、もっとお客様に愛されるためのWebサイトを実現したいと考えています。そのため、Webサイトをリニューアルすることにしました。
1つの文章には、1つの情報だけ。そして、ところどころに接続詞を入れて、より因果関係をまとめやすくサポートしました。情報の分かれ目がハッキリすることで、脳内処理がはかどるようになったと思います。
「一文一義」には、稚拙だ、単調だというイメージを抱く人もいます。確かにコラムなど、読み手を文章の世界に引き込むタイプの文章であれば、そうしたイメージやリズムにまで注意することも必要です。しかし、ビジネスの現場ではわかりやすさが優先。読み手が情報を処理しやすいように、文章を工夫することが大切だと私は考えています。1つの文章に情報を載せ過ぎず、適量の情報を読み手に届けたいものです。