わかりにくい文章の原因3選
エグゼクティブエディター 上原日々、文章の読みやすさを追求している、上原です。
最近は動画から情報を吸収することが増えてきました。動画はずっと画面を凝視するものという固定観念にとらわれていたのですが、今では別の作業をしつつ耳から情報を得られるようになったことが大きいですね(笑)。
そんな私が頻繁に再生してしまう動画は、こういうタイトルのものが多いです。「最新タブレット5選」「暇つぶしに最適なアプリ10選」「ダサくなりがちな冬服3選」など。かなり陳腐化した言い回しですが、動画の視聴者(聴取者)の立場からすると、短い時間で必要な情報の概要を確認できそう、という期待感があります。もちろん、そうでないコンテンツも多いですが......。
ということで、今回は当記事もこの「●●選」というタイトルで展開してみようと思います。題して「わかりにくい文章の原因3選」。
1. 読点が少ない(一文が長い)
以前の記事でも書きましたが、読点は文章の意味の切れ目を示し、読む人が文章の意味を理解しやすくします。加えて、文章中に余白を作るもの、楽譜のブレス記号のように息継ぎを促すものと、私は考えています。例えば、次の文章をご覧ください。
サステナビリティに関する経営目標を掲げて持続可能な社会に貢献する姿勢を社会に示すことでお客さまから選ばれる存在になる。
この例文では、60文字弱の中に「手段・行動・目標」という3つの意図が詰め込んであります。読み手が意図の境界線を見つけて、区切ってから理解することを強いる文章になっているため、負担が大きくなっています。ここは3つの意図を読点で区切るべきです。
サステナビリティに関する経営目標を掲げて、持続可能な社会に貢献する姿勢を社会に示すことで、お客さまから選ばれる存在になる。
本来なら、一文一意にするべきですし、省略された主語(「私たちは」「当社は」など)を補うべきですが、読点の参考例なのでご容赦ください......。このように意図が分かれる部分に読点を打つことで、文章を読みやすくできます。
2. 主語・述語がねじれている(かみ合っていない)
文章は主語と述語をかみ合わせることで成立します。主語と述語がかみ合っていないと、読み手は情報の整理に時間がかかり、脳の体力も大きく消費します。例えば、次のような文章です。
アイドルAの新曲は、若年層を中心にSNSで話題になったことから、10万枚の売り上げを期待している。
この文章から修飾語をいったん消してみると、「新曲は」「期待している」が残り、この2つがかみ合っていないことがわかります。これが「ねじれている」状態です。話し言葉では成立するかもしれない言葉も、文章にするとわかりにくい、理解されにくいというケースは少なくありません。
アイドルAの新曲は、若年層を中心にSNSで話題になった。このことから、10万枚の売り上げが期待されている。
この例文では、文章を2つに分けることになりましたが、重要なのは主語と述語をかみ合わせること。まず、修飾語を取って主語(主部)と述語(述部)を抜き出してみれば、かみ合っているかを確認しやすくなります。
Web担当者は、サイトのPV数向上が目標です。
→ Web担当者の目標は、サイトのPV数向上です。
「ねじれ」は読み手にストレスを与えますので、書き終えた後に「ねじれ」がないか、必ず確認しましょう。
3. 修飾語が遠い
文章には、修飾する言葉と修飾される言葉があります。「黄色い花」という言葉の場合、「黄色い」が修飾語、「花」が被修飾語となります。修飾語と被修飾語は近くに置いて使用するのが基本です。しかし、日常会話では多少離れていても、前後の文脈で通じてしまうことから、修飾語と被修飾語の関係を気にせずに使う人も少なくありません。そして、これを文章に使ってしまうと、読み手に混乱を招くというわけです......。
ライターBさんは今回も徹夜で原稿を書きお客さまから高評価を得た
例えばこの例文の場合、「徹夜で原稿を書き」の部分を、「今回も」が修飾しています。多くの人が、ライターBさんは常に徹夜で作業するタイプの人なのだな、と感じるでしょう。その意図で書いた文章であれば、この位置関係は正しいといえます。
しかし、ライターBさんが常にお客さまから高評価を得ている、ハイスキルの持ち主だった場合、この位置関係は正しくありません。修飾語と被修飾語が近づくように文章を書き直します。
ライターBさんは徹夜で原稿を書き今回もお客さまから高評価を得た
修飾語と被修飾語が近づけると、文章の意図が正しく伝わりやすくなることが、おわかりいただけたと思います。「原稿を書き」と「今回も」の間に読点を入れると、さらに意図を伝えやすくなります。
いかがでしたか? 今回は私が日常よく見かけるわかりにくい文章の中から、原因を3つピックアップしてご紹介しました。みなさんも文章を書く際には、ぜひこの3点にお気を付けください。