ChatGPTイベント参加と気づいたこと
エグゼクティブエディター 上原日々、文章の読みやすさを追求している、上原です。
長らく休筆してしまい、恐縮です。約1カ月前に参加したイベントの参加報告(遅い!)という名目で、華麗に広報Blog「MITSUE COLORS」のローテーションに復帰したいと思います。
私が参加したのは、DMM inside 社が主催していた「ChatGPT×ライター〜WebライターとChatGPT活用の未来〜」というイベントです。著名なライターであるヨッピー氏がChatGPTなどの生成AIについて、どのように考えているのかを聞けること。そして、日本マイクロソフト株式会社の高野氏から、Bingの詳しい活用方法が聞けるのではないかという期待があり、参加を決めました。
イベントは第1部と第2部にわかれ、第1部では一般社団法人42 Tokyoの坂之上氏を加えた3人でのトークセッションがおこなわれました。
トークセッション:今、ライターが生成AIとどのように関わっているか
最初のトークテーマは「たくさんの記事を制作した場合、検索順位のアルゴリズムへの影響はあるか?」です。AIは量産が得意ですから、ページの数が増えるほど信頼度が高まり、確かに検索順位が上がる可能性はあります。しかし、AIが生成した記事は粗製濫造になる可能性や、ハルシネーションが含まれる可能性があるため、注意が必要です。検索エンジンは、滞在時間が短いページを「中身がない・満足度が低い」と評価するといわれていて、粗雑なページは淘汰されていくのでは? ただ今後、AIが生成した記事の精度が上がっていくのであれば、ライターにとっては脅威 となるかもしれません。
次のトークテーマは「AIの登場により、特に影響がありそうな記事カテゴリーとは?」です。AIはHow to記事やまとめ記事などの文章生成は得意である一方、取材やインタビューなどは苦手です。また、プロンプト次第かもしれませんが、おもしろ系記事の企画や生成は難しそうです。AIが書く原稿の品質が上がっていけば、今後ライターに必要とされる資質は書くことから別の何かシフトしていくことでしょう。より人間力が試される時代になるかもしれません。
3つ目のトークテーマは「ライターが、AIを活用して仕事を効率化するための必須ツールは?」です。生成AIに関連するサービスが次々にリリースされていますが、実際にライターが作業の効率化に使っているのは何でしょうか? このテーマは参加者から意見を聞く形で進みました。
まずは、AIライティングアシスタントツールの「Catchy(キャッチー)」です。さまざまなシーンごとに最適な文章を自動で生成してくれます。次は、AI音声認識エンジンを搭載する高精度な文字起こしサービス「Notta(ノッタ)」です。1時間の音声を5分で文字起こしし、簡潔な要約を作成することができます。同じ文字起こしツールとしては「Rimo Voice(リモボイス)」を使っているというライターもいました。そして、日本マイクロソフト株式会社の高野氏からは「Microsoft Teams」の文字起こし機能もぜひご活用ください、というPRもありました。
ワークショップ & 交流会:ChatGPTなどの生成AIはどの程度使えるのか
第2部では 、参加者全員でChatGPTをはじめとする生成AIを活用して、架空の記事の企画書を作ってみました。以下が、最初に伝えられた生成AIを活用する際のコツと、企画書作成のアドバイスです。
- 「ChatGPT」を使う場合、2021年まで(非公表)のデータが基になっている
もし情報が古いと感じたら、別途調べたほうが良い - プロンプトは箇条書き形式でもOKなので、できるだけ詳しく伝えるほうが良い
- 生成AIが表示する情報は、不正確なこともある
そのため、現時点ではアイデア出しに活用するほうが向いている - 記事の中に入れる画像は「Bing Image Creator」で作ることができる
ここから参加者は20分を使って、記事の企画書を仕上げていきます。正直な話をしますと、このとき私のPCが急な不調をきたしたため、ワークショップに十分な時間を使うことはできなかったのですが......。PC再起動中などに周囲を見渡すと、たくさんの参加者さんが、特に詰まることなく作業を進めていたように見えました。
その後、お酒や料理をいただきながら、参加者同士が交流する時間が設けられました。DMM insideの皆さま、ありがとうございます。そして、その場で参加者がワークショップで作った企画の中から、優秀なものを登壇者が選出していきました。
3作品が選ばれ紹介されたのですが、企画の内容もさることながら、生成AIに作らせた内容に自身の知識を足して調整しただけという、記事概要・見出し・構成などの品質の高さに驚きました。私自身は(別の事情で)20分というワークショップの時間が短いと感じたのですが、ちゃんと活用すれば20分でもかなりの精度で草案を作ることができるのですね。生成AIはもはや、実用が必須のツールといえるかもしれません。
私はこうした生成AIを使う際、短文でAIと会話を繰り返し、内容をブラッシュアップする方法ばかりを試していました。チャットというサービス名に引っ張られすぎていたのかもしれません......。必要な情報を改行や段落で小分けにして、一気に情報を投入する方法を、あまり試してきませんでした。しかし、このイベントに参加したことで、記事の前提条件を一度にインプットする方法でも、精度の高い回答が得られることを知りました。これは私にとって重要な発見でした。
なお、このイベントの模様は、YouTubeで公開されていますので、当日参加できなかった人もその雰囲気を感じることができるでしょう。
交流会では、そこまで多くの参加者と話すことはできませんでしたが、いくつかの意見を聞くことができました。
- 現時点では、生成AIは不正確だからファクトチェックが必要
- 校正もできるが、文章を仕上げるよりは、土台作りのほうが得意だろう
- まだ、人間のライターが淘汰される段階ではないが、今後は不安も大きい
- クリエイティブの苦しみから解放されるのは良いが、書く楽しみは減るかも?
- ライターの能力は、企画力や取材力、編集力などが優位になりそう
こうした参加者(ほとんどが現役フリーライターの方々でした)の意見を聞けたことは、このイベントに参加した意義の1つといえます。私はミツエーリンクスに所属する編集者ですが、ライター側に回ることも多く、こうした意見にはほぼ同調します。いち早く、こうした生成AIとの付き合い方を確立しなくてはならない、という思いが強くなりました。