CRMをヒントにチームのヒューマンエラー予防について考える
品質管理スタッフ 小稗この記事はミツエーリンクスAdvent Calendar 2020 - Adventarの19日目の記事です。
当社のWebサイト制作プロセスでは、複数のスタッフでタスクを分担することが一般的です。そのため、納期までのスムーズな業務進行や事故予防の観点から、スタッフ間のコミュニケーションやチームマネジメントの視点が欠かせません。コミュニケーションがスムーズに行われていないと、ヒューマンエラーが生じやすくなるからです。
航空業界では事故予防のためCRM(Crew Resource Management)という概念が重視されているようです。専門スキルとは異なるコミュニケーションやチームマネジメントのスキル(ノンテクニカルスキル)を重く捉え、良好なチームワークを取りながら的確な意思決定を進めて、事故予防につなげるという考え方です。
CRM(Crew Resource Management)の要点
CRMの定義やディテールは年代や運用する企業によって異なるそうですが、小松原明哲著 「ヒューマンエラー 第3版」(丸善出版)では以下のように要点がまとめられていました。Web制作プロセスでも参考になる点が多いと感じています。
コミュニケーション
- 互いに疑問点は声に出す
- あいまいな言い方、指示は避ける
- 相手の発言には必ず反応する
- 気づいたことや操作を始める前には必ず発言し、状況を共有する
チームづくり
- 発言しやすい雰囲気を作る
- 権限を有する者は、適度な権威勾配を保つ
- リーダーシップだけでなくフォロワーシップも重要
状況の正しい認識
- 常に警戒心と全体を見渡す態度を保つ
- 気づいたことを互いに伝える
- 先を予測し、状況の悪化に備える
意思決定
- そのときに得られる多くの情報を活用して判断する
- 有益な情報と不適切な情報を見きわめる
- 判断したことは他のメンバーにも伝える
- 結果は常に振り返る
ストレス管理
- 仕事の優先順位をつける
- 特定の人に業務が集中しないよう作業の配分について常に考える
- ひとりで抱え込まず、限界を感じたらほかの人に伝える
実際の業務に照らしてみると
上記のひとつひとつにコメントを加えていると膨大な量になりますので、実際の業務場面に照らして気づいた点を書いてみます。
まずは情報の共有についてです。たとえば前工程のスケジュール遅延が生じた際、その事実が後工程に伝わらなければ、単純に当初のスケジュールを空費することになってしまいます。遅延が生じたというのはプロジェクト進行上バッドニュースですが、これを躊躇せずチームに共有することで臨機応変な対策を検討できるかもしれません。
次に情報共有のフローについてです。プロジェクト進行中に疑問点や不明点を見つけた場合、それを共有するフローが必要になります。発言のしやすさはプロジェクトごとメンバーごとに異なるでしょう。たとえば定例Mtgの進行を工夫して疑問点にフォーカスする時間を設けたり、タスク管理ツールやチャットツールなどでルールを定めて共有するなど、コミュニケーションが途絶えない仕掛けを意識的につくりだすことがポイントと考えます。
それからコメントの行い方です。私が携わる検品工程では作業者に対して検品結果をフィードバックし、ケアレスミスなどを認めた場合は必要な修正作業をお願いしているのですが、あいまいなコメントで連絡してしまうと問題の箇所や問題点に認識のズレが生じてしまいます。そのため、ミスを認めた箇所、どう間違っているのか、どういった問題を認識したのかを明確にコメントするよう心がけています。
なお、検品時のフィードバックに関しては、ケアレスミスを責めるようなコメントは基本NGと考えています。事実を躊躇なく共有していく関係づくり、という観点で必要な姿勢であると理解をしています。
チームのヒューマンエラー予防は情報共有の動機づけと心理的安全性がカギ
さまざまなコミュニケーションスキルを持ったスタッフが混在する現場では、コミュニケーションを十分意識したマネジメントがヒューマンエラーをうまく予防するポイントであるようです。
上記のCRMの例に倣うと留意するポイントが多岐にわたりますが、個人的には、
- 情報共有を行う動機づけとして、その重要性をメンバーに意識してもらうこと
- 発言に躊躇することが少ない場づくり、心理的安全性の確保
プロジェクトの早期にまずこの2点を押さえられると、相互の状況をより理解しやすくなり、CRMの各項目に沿う形で問題点や抜け漏れに気づきやすい(=未然に問題を予防できる)業務進行につながるのではと考えています。