「校正」と「Webコンテンツの検品」の共通点(2)
品質管理スタッフ 小稗今回の投稿は、1月に投稿した「校正」と「Webコンテンツの検品」の共通点の続きにあたります。『校正のこころ』という書籍から気になった点を取り上げて、当社の検品業務と比較しながらその特徴を再確認してみました。
「素読み」は検品対象範囲外にあるミスの気づきにあたる
上記の書籍によると、素読みとは「原稿を離れ、活字に組まれたゲラだけを相手にして読み、そこに隠された誤りや適切ではない部分をチェックし、かたちを整えていく作業」を指すとのこと。
前回の投稿でも触れましたが、当社の検品業務ではクライアントからお預かりした原稿と実装作業の終わったWebページとの差異をチェックしています。そのため、原稿から離れることは検品対象として前工程からインプットされた箇所以外に目を向けることを意味します。検品のレギュラーな業務スコープとしていないことは校正業務とは異なる特徴のようです。
「素読み」で見つかる問題として、同音異義語の誤変換が挙げられます。PCやスマートフォンといったデジタル端末とそのキー入力で原稿や指示テキストは作成されますので、誤変換は非常に身近なヒューマンエラーといえます。
Webコンテンツの実装時に誤変換があれば原稿との突合(テキスト比較ツールなどを用いて機械的に差異をだします)で比較的容易に気づけますが、そもそも入稿時から変換ミスが生じている場合、この妥当性を確認するのはチェック担当者の知見や注意力が問われることになります。さらにクライアントによってはその業界ならではの専門用語を使用するWebページも存在しますので、妥当性について判断が難しい場面も珍しくありません。この場合はクライアントに確認するのが賢明ということになります。
検品時、この「素読み」に取り組み過ぎてしまうと過剰なコストをかけてしまうことになりますが、それでも気づいた点はできるだけフィードバックするよう部門内で示し合わせしています。このフィードバックをどの程度行うか、いつも悩ましく思っているわけですが、上記の書籍を読む限り、校正者の関与する距離感の難しさと重なるポイントのように思われます。適切なフィードバックというものは唯一の正解がないようですね。
AIを含んだ機械チェックとの距離感
書籍ではAIと校正業務の将来についても触れています。AIを校正に利用するにあたっては「目的や達成目標をどこに定めるかの議論が不可欠」との指摘がありました。読み進めている版は2021年のものですので、現在のAIの急速な普及を踏まえてはいないわけですが、プロンプトデザインといったAIにより適切なインプットを行うという現在のトレンドにも合致する見解と思っています。
このAIのアウトプットの方向性を定める際に当面ひとが介在する必要があるものと理解をしていますが、書籍ではAIに校正作業の大半を託す未来が思ったより早く訪れるのではと指摘されていました。以下、関連する箇所を引用します。
校正にはリスクマネジメントと言葉のエンパワメントという二つの役割、目的があります。現在のところAIは、リスクマネジメントとしての校正にかんしては、まちがい探しを中心に、人間をはるかに超えていくかもしれない。しかし、減点法ではなく足し算が必要な言葉のエンパワメントについては、どこまで迫れるか。今後の展開が非常に楽しみです。
興味深いのは、ヒトの介在する必要性を認めつつもAI技術との共存を視野に入れている点だと思います。手前勝手な解釈になりますが、機械に委ねる面を明確にしていった結果、ヒトにしかできない校正の輪郭が浮き彫りになるといったイメージをお持ちなのではないかと勝手に行間を読み取った次第です。
先日の当社のコラムでもAIの積極的活用について触れております。私の所属する品質管理部でも「検品×AI」という観点でどういった活用が可能か、様々なトライをしているところです。AIと共存する未来を想定する方が前向きという点において、校正とWebの検品、チェックに関わる業務には通底するところがあるのかもしれません。