ライターだって、UXを語りたい。

エグゼクティブ エディター 上原

意外に多かった共通点

私は、Webコンテンツの編集などを担当しているエディターです。Webコンテンツが伝えたい情報を伝えられるように、ターゲットユーザーに合わせて、内容を企画したり調整したりする作業をしています。肩書きはエディターなのですが、案件の性質により自らライティングする機会もたくさんありますので、ここではライターということで通させてください。

2016年4月から、私はユーザエクスペリエンス本部の一員として、本格的なスタートを切りました。これを機にユーザビリティ・UXを勉強して、将来は「ユーザビリティ・ライター」と名乗って活動しようと考えています。その第一歩として、まずは関連する本を数冊読んでみました。きっと新たに覚えることも多いのだろうと覚悟していたのですが、意外にもこれまで従事してきたライティング・編集業務との共通点が少なくありませんでした。

例えば、広告コピーを考える場合

例えばどのような共通点があるのか、以下でお話しします。仮に格安SIMを販売し、携帯電話サービスを提供する会社が、広告用に以下のようなキャッチコピーを用意して、その効果を測定したとします。

「1カ月のスマホ利用料が、たった1200円!」
「高いスマホ料金、いつまでガマンして払い続けるの?」

前者は事実を述べて強調したもので、後者は感情に訴えるような言葉を選択したもの。この場合、ライティングのセオリーでは、後者のコンバージョンが高くなるといわれています。なぜでしょうか。それは、文章で誰かに何かを伝え、行動をしてもらおうとするとき、事実の伝達だけではユーザーの感情は動かないからです。必要となるのは事実ではなく、メリットの先にあるベネフィットを語ることです。そしてベネフィットを語ることが、ユーザーの感情を揺さぶり、それが行動につながります。

ただし、単純にベネフィットを抽出して大上段に掲げれば終わり、ではありません。今回のように「ガマンしているであろう人に訴える」打ち出し方もあれば、「今よりもっと節約できる!」「浮いたお金で、ごほうびディナーを!」という打ち出し方もあります。広告のターゲットとなるユーザーを見きわめ、そのつどユーザーの気持ち(インサイト)をしっかりと想像しないことには、文章でユーザーの心を揺さぶることはできないのです。

このユーザーの気持ち(インサイト)を想像することはユーザビリティに、「どうすればユーザーの心を揺さぶることができるのか、行動してもらうことができるのか」を考慮してライティングする点はUXデザインに、それぞれ通じる話だと、私は考えています。

ライティングとの共通点はほかにもある

実は、10年近く前に「もっとユーザーの気持ちに訴えかけるライティングをすべきだ」という流れが生まれました。一部の有識者はそれを「エモーショナル・ライティング」と呼んでいます。これは、論理的で分かりやすい文章を追求した「ロジカルライティング」と双璧をなす存在で、現在でも活用するケースがたくさんある技術です。

このようにライティングの技術の中には、ユーザビリティ・UXの考え方に通じることが、ほかにもあります。ライターが自然と行っていることの中から、ユーザビリティ・UXの要素がまだまだ見つけられると考えています。そうした技術をはじめ、ライティングとユーザビリティ・UXのあいだにあるちょっとしたことまで。今後この「UX Blog」で語っていければと思います。